mediPhone導入事例インタビュー
沖縄科学技術大学院大学様
保健センター/OISTクリニック
産業保健・安全医師/マネージャー 関 有香子 先生
クナヴラ 佳代 様

沖縄科学技術大学院大学(OIST)は、世界80以上の国と地域から学生・研究者が集まる国際色豊かな大学院大学です。保健センターでは学生・職員とその家族の医療サポートを行っていますが、特に英語以外の言語での受診支援ニーズが課題でした。今回、mediPhone Assistance Line導入の経緯と効果について、関有香子先生とクナヴラ佳代様にお話を伺いました。
貴学の概要と保健センターの役割について教えてください

沖縄科学技術大学院大学(以下、OIST)は、分野の垣根を越えた研究を通じて科学の新しい可能性を切り拓くことを目指す大学院大学です。すべてのプログラムは英語で行われ、世界最高水準の研究と教育を推進しています。世界各国から多様なバックグラウンドを持つ研究者や学生が集まり、2025年現在は80を超える国と地域から人材が在籍しています。学生においては約8割を外国人が占める、国際性豊かな環境が大きな特徴です。
また、OISTでは、学生や職員だけでなく、その家族がともに暮らすコミュニティが形成されています。世界各地から集まる優秀な人材が安心して生活し、長くOISTで活躍できるよう、OISTコミュニティ全体のサポートに力を入れています。
こうした環境の中で、保健センターは学生・職員とその家族の医療に関わるサポートを担っています。具体的には、医療ケアや健康相談、健康診断の実施、医療機関の受診支援などを行っています。さらに、保険診療が可能なクリニックを学内に併設しており、私たちもそこのスタッフとして勤務しています。多くの学生がキャンパス内に居住している一方、周辺には車がないと病院に行きにくい環境にあります。そのため、大学内でプライマリーケアを提供できる体制を整えています。
mediPhone Assistance Line導入前には、どのような課題がありましたか

実は、mediPhone Assistance Lineの導入前から、メディフォンが提供していた「電話による医療・健康相談業務」(※現在はサービス提供停止中)を利用していました。当時は「顔見知りである保健センターに相談したい」というニーズが強く、夜間など営業時間外に緊急対応が必要になると、職員が直接出動していました。しかし、時間外対応が大きな負担となっていたため、外部に委託できないかと考え、夜間・休日に英語で健康相談ができるサービスを導入したのです。ただし、利用は思ったほど広がりませんでした。
利用が伸びなかった背景には、学生や職員が日本での生活に慣れてきたことや、沖縄の医療機関や受診支援に関する行政サービスの多言語化が進んだことがあります。また、保健センターに相談した上でメディフォンの遠隔医療通訳サービスを利用する方が安心感があり、「翌朝まで待とう」と考えるケースが多かったのだと思います。
そのため以前のサービスは解約を検討していたのですが、そのタイミングで新しくmediPhone Assistance Lineを提案していただきました。
新しくなったサービスでは「営業時間外にも頼れる」という点は従来通りでありながら、多言語対応ができるのが魅力でした。日中であれば、受診前の対応や受診先の案内、予約のサポートといった相談には保健センターで十分対応できます。しかし実際には、学生や職員本人は英語でコミュニケーションが取れることを前提に入学・入職していても、ご家族の中には英語が苦手な方も少なくありません。OISTのコミュニティは20~30代の若い世代が多く、妊娠・出産も毎年十数件ほどありますが、特に新しく妊娠・出産を迎える方は、英語ができないと孤立しやすいのではないかと感じていました。
そこで、私たちがカバーできない「英語以外の言語」での医療機関受診サポートを提供できれば、ご家族の安心にもつながるのではないかと気が付き、そこが導入の決め手になりました。
導入は学内でどのように検討を進められましたか

私たちが良いと感じたからといって、すぐに導入できるわけではありません。上長に相談したところ、まずは学内のニーズを調査するようにと言われました。そこで、利用の可能性がある人を対象に、サービス概要の動画を見てもらい「使ってみたいと思うか」をアンケートで確認しました。
結果として、「このようなツールがあればぜひ使いたい」という声が多く寄せられ、導入に向けた検討が進みました。特に、mediPhone Assistance Lineは手元の携帯端末からすぐ利用できる点に、手軽さを感じた方が多かったのかもしれません。
mediPhone Assistance Lineの導入後、どのような効果がありましたか

英語以外での対応が必要な方もスムーズに相談できるようになり、利用者にとっても保健センターにとっても手間が減ったと感じています。
これまでは、英語が話せないご家族が相談したい場合、英語ができる学生や職員本人が付き添って保健センターまで来ていました。しかし、学業や仕事の都合で対応できないこともあり、困るケースがありました。導入後は中国語やロシア語などでの相談実績もあり、「自分の言葉で相談できる」環境が整ったと感じています。
(弊社担当)実際のご利用の中には、デリケートな内容も含まれていたかと思います。例えば、不妊治療で受診される際の医療通訳では、過去の手術歴や月経周期といった身体に関する情報に加え、同意書や婚姻届など手続き上の個人情報も共有されることがありました。こうしたケースでの利用については、どのようにお考えでしょうか。
顔の見えない第三者だからこそ相談できる内容がある、という点です。避妊や不妊などセンシティブな内容は、顔見知りだと相談しにくい場合もあります。コミュニティが狭い環境だからこそ、外部の専門サービスに気軽に話せることは、健康課題の早期解決につながっていると思います。
実際、導入後に行った利用者アンケートでは「サービスがあってよかった」という声が多く寄せられました。保健センターにも繋がらない、どこにかけたらいいか分からないという時に、「もしものための備え」として頼れるところを知っていることで、利用者の安心感が高まっているのかもしれません。
外国人学生や従業員への健康支援について、受け入れる企業や大学にアドバイスがあればお聞かせください
まず、薬の持ち込みやワクチンについては、日本と認可状況が異なる場合があります。渡日前から相談を受けておくことで、トラブルを避けられるだけでなく、「サポート体制が整っている」という安心感を外国人の方にも持っていただけると思います。
また、文化的な違いへの理解も欠かせません。例えば、相談に来る時に何も決まっていないのに来たり、逆に考えすぎて膨大なリストを持って来たり、本当に色んな方がいます。
私たち自身も、自分たちの文化的な常識を当たり前だと思っていることに日々気づかされます。そうした時は、こちらの当たり前を押し付けるのではなく、まずは相手の話を聞くことが大切だと思います。