厚生労働省のマニュアルで「推奨されていない」通訳のリスクとは
家族・友人・同僚には技術的な問題だけでなく、倫理的な問題も。
語学ができる職員の場合は、本来業務が滞ることも大きな課題に。
厚生労働省の「外国人患者の受入れのための医療機関向けマニュアル」では「このように、通訳体制の整備は、単に利便性やサービスの問題ではなく、日本語でのコミュニケーションが困難もしくは不十分な患者の受入れを行う以上、医療機関として医療安全対策の一環として検討が不可欠な問題です。」と記載があり、医療安全上のリスクのある通訳として、家族通訳・友人通訳・同僚通訳・バイリンガル職員通訳が挙げられています(右図)。
推奨されていない通訳を利用していた場合、誤訳やトラブルのリスクが高まるだけでなく、訴訟等に発展するリスクも指摘されています。 このことから、家族や友人通訳等とは異なる通訳体制の構築が推奨されているのです。
医療安全の観点から、推奨されるのは通訳ツールごとの特性に合わせた使い分け
専門性の高い場面では、医療通訳に限定してリスクを低減。
その他のリスクの少ない場面でのみ機械翻訳を取り入れるなどの
使い分けで、リスク低減と手軽さの両立を。
医療機関での通訳は、IC/ムンテラのように非序に専門性の高く・誤訳リスクの高い(間違った通訳が重大な問題に繋がりやすい)場面から、受付や病棟での一般的な会話まで、会話に多様性があるのが特徴です。飲食店や観光事業者などで便利に使われている通訳ツールが必ずしも医療現場でのすべての場面で、安全に使えるわけではありません。
そのため、厚生労働省のマニュアルではシーンに合わせた通訳手法の使い分けが推奨されています。特に翻訳ツールについては、便利な一方、診療上のトラブルにつながるリスクがあるとして、日常会話に使用を限定するなど、院内で十分なリスク管理を行いながら利用することが推奨されています。診察室など医療の専門性が高い場面では人による通訳、受付や病棟などでの日常会話では翻訳ツールといった使い分けルールを院内で定めることが重要です。
万が一の誤訳に対する、通訳事業者側での備えも確認を
専門的な医療通訳を利用することで、誤訳のリスクを低減することができますが、一方で、万が一の誤訳に備えることも必要不可欠です。通訳サービスの選定の際には、誤訳が発生した際に、どのような対策がとられているかを忘れずに確認することが重要です。
メディフォンでは、高い専門性の通訳者のみを採用して、誤訳ができるだけ発生しないような体制を築いているだけでなく、万が一の誤訳に対しても事業者としての責任ある対応を行えるように、外国人医療に詳しい弁護士を顧問に迎えるとともに、事業者としての賠償責任保険への加入で、万全の体制を整えています。
メディフォン顧問医療弁護士
大磯義一郎
医師、弁護士。浜松医科大学医学部教授。日本医科大学医学部卒業後、日本医科大学付属病院第三内科勤務。早稲田大学大学院法務研究科入学、平成19年早稲田大学大学院法務研究科修了後、司法試験に合格し、司法修習を終え、弁護士登録(第一東京弁護士会)国立がんセンター知的財産管理官勤務を経て、加治・木村法律事務所に勤務。帝京大学医療情報システム研究センター客員准教授も務める。