mediPhone導入事例インタビュー

九州大学病院様

国際医療部 国際診療支援センター 
相良理香子先生、有田奈未様、祁潔様

希少言語の話者を含め、様々な国の患者さんを受入れ。遠方の家族とのコミュニケーションや遠隔医療相談をはじめ、患者さんの幅広いニーズに応える国際診療支援センターの相良先生、有田様、祁様にお話を伺いました。
(2024年2月27日インタビュー実施)

日本有数の大規模病院 様々な国から来院

九州大学病院様

九州大学病院の外来外国人患者数の推移

Q. 貴院の概要と外国人患者さんの来院状況について教えてください。

相良先生:
九州大学病院は病床数1,267床の、日本でも最大規模の病床数を持つ病院です。
2017年にJMIP(外国人患者受入れ医療機関認証制度)認証を取得している他、福岡県における外国人患者さんを受け入れる拠点的な医療機関に指定されており、重症者を含め外国人患者さんを受入れています。

国際診療支援センター(International Patient Support Center、IPAC)では、外国人患者さんの受入れや通訳・翻訳業務、海外遠隔医療相談、受入れ体制整備などをおこなっています。

外国人患者さんの受入れ人数は、コロナ禍でも増加傾向にありました。訪日患者はコロナ禍で急減しましたが、入国制限が緩和されてからは毎日のように受診の相談が来ています。

患者さんの層として最も多いのは日本に住んでいる方です。国籍は中国、韓国、ベトナム、ネパールなどで、日本語が話せる方が多いです。他には、バングラデシュやパキスタンなどイスラム教の国からの患者さんも来院しており、簡単な英語のコミュニケーションはできるものの日本語は難しいという方も多くいらっしゃいます。

希少言語と予約対応のニーズに応えるためメディフォンを導入

Q.メディフォン導入の背景について教えてください。

相良先生・有田様:産科・小児科を中心に、希少言語の利用ニーズがあったことが挙げられます。メディフォン導入の前から他の通訳サービスを利用していましたが、対応できる言語数が限られていたり、対応言語であっても繋がらないことがあったりしました。

メディフォンは対応言語数が30以上と幅広く事前予約も可能だったため、院内からの評判も良く、導入を決めました。

幅広い国籍の患者受入れ 安心して対応が可能に

九州大学病院様

IPACの執務室。多様な患者さんに対応するための参考書籍が多数。

Q.メディフォン導入後、外国人患者さんの受入れに変化はありましたか。

相良先生:希少言語を話す患者さんの受入れ相談があった際に、対応できるようになりました。他院からアラビア語やロシア語の患者さんを受入れてくれないかとご相談を頂くことがあるのですが、スムーズに対応できています。

以前は、ご家族がある程度日本語を話せると、リレー通訳形式*で対応する症例が多くありました。しかし、母語がペルシア語、ベンガル語などの場合、専門的な医療用語を理解しているかが医療者側からはわからなくて。
正確性が求められる場面で大事な部分を飛ばして通訳しているのではないかと不安でしたが、医療通訳が入ることで安心感が得られたと聞いています。

*リレー通訳形式とは
3言語以上を用いておこなう通訳方法。A言語をB言語に訳し、さらにB言語をC言語に訳す。希少言語を通訳する際に用いられる。

有田様:あとは、事前予約ができるのはとても大きいです。他のサービスでは通訳を使おうと電話してもなかなか出ない、出ても対応できないと言われることがあって。なんとかできないかと思っていました。

相良先生:患者さんがいるその瞬間に通訳ができないと意味がないですからね。

遠隔地の家族への説明も可能に

Q.九州大学病院様は「3者間通話*」もご活用いただいているかと思います。実際にご利用いただいたケースについて、詳しくお伺いできますか。

*3者間通話とは
3人で同時に通話する機能。メディフォンの医療通訳サービスでは、医療機関様、患者様、通訳者などの3人以上が同時に通話することができ、患者様やご家族が遠隔地にいる場合でも通訳の利用が可能。

有田様:韓国やアメリカの方に対応したケースがあります。

韓国の方は旅行中に緊急入院された患者さんで、他県にいる甥御さんに容体を伝えるケースでした。甥御さんは少し日本語ができたので最初は日本語で説明していたのですが、100%理解していないようでした。重要なICだったため母語で伝えた方が良いと思い、3者間通話で韓国語を利用しました。

そうしたらすごい量の質問を頂いて。患者さんが意識不明だったこともあり、容体や料金など重要な部分を第一に伝えたかったので、ドクターも安心して話せたようです。

アメリカの方には、アメリカにいる患者さんのお母さんに術前と術後に容体を伝える場面で利用しました。まだ患者さんの意識が戻っていないときもすぐに電話して、「無事終わりましたよ」とお伝えできました。患者さんのお母さんから「対応してくれてありがとう」と感謝のメールが来て、3者間通話が役に立ったと感じました。

通訳の利用を促進するため、院内への周知を工夫

九州大学病院様

メディフォンをインストールしたタブレットは、貸出表で管理。

Q.院内でスムーズに通訳を使っていただくための工夫があれば、教えてください。

相良先生:メディフォンの使い方を説明する動画を作って院内のホームページに掲載したり、医師に使い方マニュアルを定期的にメールで送ったりなどして周知しています。ですが、院内で未だにメディフォンが使えること を知らない職員もいます。

祁様:患者さん側から、ご自身のスマホに入っている翻訳アプリを使いたいという声も聞きます。病院のタブレットを使うよりも、ご本人は慣れているので。

有田様:機械翻訳だと翻訳の精度があまり良くないと感じているので、院内の方にも遠隔通訳に慣れてもらい、積極的に使ってもらいたいと思います。

外国人医療の情報発信も積極的に

九州大学病院様

九州大学病院・メディフォン共催セミナーの案内(2024年度)

Q.院内外に向けて、外国人医療に関する研修会を実施されているかと思います。実施の概要や成果をお聞かせください。

相良先生・有田様:
研修会は2021年、2023年、2024年と3回開催しました。2024年のテーマは、以前から実施したいとIPAC内で 話に出ていた異文化理解にしました。
九州大学の教授や九州大学病院に入院された患者さんのご家族にお話いただいた他、メディフォンからの講演は通訳ツールの使い方をご紹介し、院内に周知する機会にもなりました。

また、セミナーを大学病院や福岡県の医療機関に周知しました。何かあった時に相談できるので、こういった機会に繋がりを作れるのは非常に良いと思っています。

海外遠隔診療のニーズにも対応

九州大学病院様

九州大学病院の外観

Q. 渡航医療の対応もされていると伺っています。今後の展望をお伺いできますか。

相良先生:
渡航診療については、治療目的の患者さんのみ対応する方針です。コロナ禍で激減していたのですが、去年(2023年)に入国制限が緩和された後から徐々に相談件数が増えており、特に11月頃からは毎日のように相談を受けています。

国籍は中国の方が圧倒的に多いですが、今年度は23か国と様々な国から受診したいという問い合わせが来ています。現在までに、実際に渡航患者さんの受入れや遠隔診療の相談をおこなったケースは42件にのぼります。

今のペースを考えると今後も渡航医療の相談が増えるのは間違いないので、遠隔医療相談を組み合わせることでスムーズに対応していきたいです。九州大学病院ではこの2年ほど遠隔医療相談を実践しており、来日前の相談や治療後の面談が必要な場面で対応しています。

また、メディフォンのビデオ面談室機能 *は、遠隔医療相談の中で役に立つのではないかと注目しています。通常、モニターを映して医師と患者さんで意見を交わしたいという場面では、国際医療部の別部署と連携して行っています。
しかし遠隔医療相談の内容によっては、例えば診察室で行うことができるビデオ面談室機能を使えば部屋の手配も要らず、医師と患者さんの日程調整もすぐにできますので、今後利用の需要が高まってくるのではないかと考えています。

* ビデオ面談室機能とは
メディフォンが提供するビデオ医療通訳サービス機能。
アプリをダウンロードする必要なく、インターネットの接続があれば日本国外からもビデオ通話に参加が可能。
※一部地域では利用に制限があります