mediPhone導入事例インタビュー

日産厚生会 玉川病院様

玉川病院
国際対応室 原賀様
看護部兼国際対応室 山東様

東京都世田谷区に位置し、多様な国籍の患者様が来院される玉川病院。以前から通訳サービスや語学堪能な職員による対応を行っていましたが、特に産科において24時間365日いつでも医療専門の通訳につながる環境の必要性を痛感。メディフォン導入の経緯と導入による効果について、国際対応室の原賀様と山東様にお話を伺いました。

産科で浮き彫りになった「夜間・緊急時対応」の壁

玉川病院の産科では、以前から日本語が話せる同伴者がいる場合、外国人患者様を受け入れていました。言葉が伝わりづらい場合は、院内のスタッフや外部の通訳サービスで外国人患者様に対応。2024年からは同伴者なしの場合でも幅広く受け入れるようになりました。

「助産師から『夜間に外国人の患者さんから緊急の電話が来たら、どう対応すればいいですか』と相談された時、これは早急に対応しなければと思いました。電話は日本語が話せる人からかけてもらうようにというルールは決めているのですが、緊急時にご本人が直接電話してくる可能性は十分にあります。スタッフの不安を取り除き、どんな時でも患者様を受入れられる体制が必要でした。」(山東様)

以前導入していた通訳サービスは医療専門ではなく、東京都の救急通訳サービスは英語・中国語以外の言語の夜間対応はできないという課題がありました。院内スタッフに24時間の負担を強いることもできません。「万が一」に備える体制の構築が、メディフォンの導入のきっかけとなりました。

導入の決め手は「医療特化の品質」と「かゆいところに手が届くサポート体制」

数あるサービスの中からメディフォンを選んでいただいた決め手は、大きく2つあったと言います。

① 医療に特化した、信頼のおける通訳品質
「以前利用していた翻訳会社は、日本語をそのまま直訳してしまい変な文章ができてしまうことがありました。その点、メディフォンは医療に特化しているので、文脈を理解し適切な表現をしてくれるだろうという期待がありました。メディフォンは他社と比べると高いと思われがちだと思いますが、患者様の命に関わることですから、質の高さは重要だと思います。」(原賀様)

②現場のニーズを捉えた、豊富な情報提供
「もう一つの魅力は、セミナーや資料の豊富さです。医療安全に関する資料を探していた時、まさに『これが欲しかった』という内容のものがメディフォンのサイトにありました。現場が本当に必要としている、かゆいところに手が届く情報を提供している姿勢に信頼感を持ちました。」(原賀様)

現場の安心感を醸成し、より質の高い医療コミュニケーションを実現

「先日、皮膚科の診察で利用した際、通訳者の方がまず医師に導入部分(何科での受診か・どんな状態かなど)と状況を確認してから通訳を始めてくれたことに感心しました。言われたことを訳すだけの『受け身の通訳』ではなく、医療者と一体となってコミュニケーションを円滑に進めようという姿勢は心強く感じます。」(山東様)

一方で、医師からは「処置をしながらの遠隔通訳は、伝える内容を考えながら話す必要があり、処置への集中が難しい」という声も。「じっくり説明が必要なインフォームド・コンセント(IC)や問診は遠隔通訳」「緊急性の高い処置は院内通訳者」といった、状況に応じた使い分けの重要性も明らかになりました。

また、スタッフの負担を軽減する効果も期待しています。「病棟の業務と掛け持ちで通訳をするのは体力的にも精神的にも大変です。通訳に呼ばれると、どのくらいの時間業務を抜ければいいのか読めないので、院内通訳者の負担はとても大きいと感じます。」(原賀様)

兼務の通訳スタッフに過度な負担をかけることなく、いつでも専門家のサポートを得られる体制は、現場に安心感をもたらしています。

稀なケースに備える「外国人患者の医療安全マニュアル」の策定を進める

現在、玉川病院様が最も力を入れているのが、「外国人患者のための医療安全マニュアル」の作成です。

「宗教による食事や死生観の違い、ご遺体の搬送方法など、発生頻度は低いものの、一度起これば現場が混乱しかねない事例は数多くあります。そうした稀なケースにこそ、誰もが手順通りに動けるようマニュアルを整備しておくことが、医療安全の観点から重要だと考えています。」(原賀様)

今後はレアケースのマニュアルやフローを作成し、院内の受入れ体制を強化したいとのことです。また、一病院だけでは解決が難しい課題もあり、他の病院がどうしているのか知見を共有できるような交流の場があればぜひ参加したいと他院との連携にも意欲を見せます。

玉川病院の院内の取り組み

今回のインタビューでは、玉川病院が外国人患者を安全に受入れるために行っている具体的な取り組みについてお話いただけましたのでご紹介いたします。

1. 職員と患者を巻き込む多彩な情報発信
職員や患者の興味を引き、国際理解を促進するための活動が展開されています。

ワンポイントイングリッシュ
ユーモアあふれるイラストと共に、現場で役立つ英語や、思わぬ誤解を生む危険な言い回しなど、楽しく学べるコンテンツを毎月発行。以前は紙で作成していましたが、現在は電子カルテシステムで全職員に配信しています。

リンクナース通信
国際対応を担う「リンクナース」が中心となり、自身の海外経験などを基にしたコラムを毎月発行。各国の文化や習慣を紹介する内容は読み物としても面白く、JMIP(外国人患者受入れ医療機関認証制度)の審査でも高く評価されました。

E-Learning研修
2023年度から1年に1回、全職員を対象にE-Learningによる外国人患者対応の研修を行っています。やさしい日本語や異文化理解について楽しく学べるような動画を作成しています。

外国人インターンシップの受け入れ
ドイツの医学生を看護インターンとして受け入れるなど、国際交流にも積極的。その様子は患者向けのニュースレターでも紹介されています。

2. 医療安全と災害対策への取り組み
外国人患者様の安全を守るための対策が講じられています。

災害時コミュニケーションシート
火災や地震などの緊急時に指差しで意思疎通ができる3か国語(日・英・中)対応のコミュニケーションシートを作成。災害時でも冷静に対応できるよう、受付や外来、各病棟に配備されています。

全病室への避難経路図の設置
全ての病室にその部屋専用の避難経路図を個別に作成し設置。誰でも自分のいる場所からの避難経路をすぐに確認できる体制を整えています。

英語による防災アナウンス
院内の火災訓練では日本語に加え英語のアナウンスも導入しています。

3. データに基づいた現状分析と成果
活動の成果は具体的なデータとしても示されています。

外国人患者比率:全患者の約7%を占めており、年々増加傾向にあります。
未収金の件数:玉川病院では過去6年間で未収金はわずか2件(総額3万円弱)。これは医事課の徹底した対応の賜物であり、JMIP審査でも高く評価されました。
患者満足度:Googleフォームを活用した満足度調査では、外国人患者から非常に高い評価を得ています。