医療滞在ビザとは?|医療機関向けに制度概要と申請手続きを解説

  • 2024.06.04

    医療ツーリズム

アイキャッチ_医療滞在ビザとは?医療機関向けに制度概要と申請手続きを解説

医療滞在ビザは、2011年から現在にいたるまで、医療ツーリズムで来日する外国人に利用されています。

本記事では、医療滞在ビザの制度の概要と申請手続きを紹介し、医療機関がおこなう必要があることについて解説します。

医療滞在ビザとは?

医療滞在ビザは、日本で治療・健診等の医療機関の指示による医療及び関連サービスを受けることを目的として来日する訪日の外国人患者さんや同伴者に発給されるビザです。

医療滞在ビザが創設されたのは2011年です。前年度に出された「新成長戦略」において、アジアの富裕層向けに医療等のサービスを観光と連携して促進していく、という国家戦略が打ち出され、その戦略の施策の1つが「医療滞在ビザ」の創設です。

以下に医療滞在ビザの概要をまとめました。

項目内容
対象活動の範囲医療機関における治療、健康診断、温泉湯治等
数次ビザ
(マルチビザ)  
必要に応じ最大3年間有効の数次ビザが発給される
滞在期間外国人患者さんの病態等を踏まえて最大1年間
申請手続きパスポート、写真、査証申請書、医療機関による受診等予定証明書および身元保証機関による身元保証書等
※90日以上滞在する場合在留資格認定証明書等
参考:厚生労働省 外国人患者受入れのための医療機関向けマニュアル

医療滞在ビザで90日以上滞在する場合は、入国管理庁に在留資格認定証明書の交付申請をおこなう必要があります。また、医療滞在ビザは身元保証機関や医療機関の協力が必要です。

【補足】身元保証機関とは

医療滞在ビザの発給の際は、身元保証機関が患者さんの身元保証をおこなう必要があります。身元保証機関は、身元保証以外に、医療ツーリズムで来日する外国人患者さんに対して、訪日前から帰国後まで一連の支援や調整業務をおこないます。

身元保証機関は、観光業者か、外国人患者さんと医療機関をつないで両者間の調整をおこなう国際医療コーディネーターという事業者がなることがほとんどです。

医療滞在ビザの取得数の推移

以下のグラフに、医療滞在ビザの取得数の推移を表しました。

参考:ビザ(査証)発給統計 | 政府統計の総合窓口

以上のグラフより、医療滞在ビザの発給数は年々増加していることがわかります。2020年~2021年のコロナ禍は落ち込みましたが、2022年にはコロナ禍前の水準を上回っています。ただ実数値では、医療滞在ビザの取得者数は2,000程度と多くはないため、短期滞在ビザを利用して医療行為を受けている人が一定数いると考えられます。

医療ツーリズムは今世界レベルで流行中であり、今後も医療滞在ビザの発給数は上昇傾向が続くと言われています。

医療ツーリズムの市場規模については以下の記事で解説しております。ぜひご活用ください。

医療滞在ビザの適用条件

医療滞在ビザの適用条件は以下の3つです。

・医療行為を受けること
・医療費を払えること
・(90日以上の場合)入院すること

医療滞在ビザを取得する場合は、医療費を支払えることが条件になります。具体的には、病院などへの前払い金の支払い済み証明書や、銀行の預金残高証明書の提出が必要になります。

医療滞在ビザ申請のプロセス

90日を超えて日本に医療目的で滞在する際に必要な医療滞在ビザですが、申請手続きは複雑です。また医療機関の協力が必要な書類もあります。

海外にいる外国人患者さんが、90日を超えた医療滞在ビザを申請するプロセスを以下に示しました。

1. 医療ツーリズムの受入れが決定する(身元保証機関を中心に『医療機関による受診等予定証明書及び身元保証機関による身元保証書』を作成し外国人患者等に送付)
2. 在留資格認定証明書交付申請に必要な書類を作成、入国管理局に提出する
3. 申請が受理され、在留資格認定証明書が発行される
4. 外国人患者さんが、在外公館で査証申請をおこなう(医療機関による受診など予定証明書及び身元保証機関による身元保証書などが必要)

注意点としては、在留資格認定証明書交付申請と査証申請の2回、書類の提出が必要なことです。前者の在留資格認定証明書交付申請は、日本にある入国管理局でおこなうため、医療機関又は患者さんの親族がおこなう必要があります。一方、後者は海外の在外公館でおこなうため、患者さんが書類の提出をおこないます。

医療機関がおこなうこと

医療機関が医療滞在ビザに関しておこなうことは、主に身元保証機関との連携及び必要書類の作成です。

身元保証機関との連携

医療機関は、外国人患者さんから直接問い合わせがあった場合、基本的に身元保証機関と連携する必要があります。医療滞在ビザの取得のために身元保証機関の身元保証が必要というだけではなく、身元保証機関によっては外国人患者さんへのサポートやホテル・空港までの出迎えの手配などをしてもらえます。
医療機関だけで様々な手続きを進めることは難しい場合も多いので、医療ツーリズムのコーディネーター事業をおこなっている身元保証機関を探してみると良いでしょう。

医療滞在ビザの取得に際しても、身元保証機関が中心となって外国人患者さんと書類のやり取りをおこないます。医療機関による受診等予定証明書及び身元保証機関による身元保証書の送付や、その他必要書類も同様です。

必要書類の作成・提出

医療機関がおこなわないといけないことの2つ目に必要書類の作成があります。医療機関が作成する必要がある可能性のある書類は以下の4種類です。

・外国人患者受入れに係る証明書
・入院先の病院等に関する資料(パンフレットなど)
・治療予定表
・受診等予定証明書

必要書類に関しては、医療滞在ビザを申請する際の状況や、ビザを申請する期間によって変わります。

医療滞在ビザの制度を理解して、円滑に医療ツーリズムを受け入れましょう!

医療滞在ビザは、医療機関の指示のもと医療及び関連サービスを受けるために来日し90日を超えて入院を含む滞在をする際、取得が必要です。

しかし、医療滞在ビザの取得の手続きは、状況や申請する期間によって異なります。また様々な書類の提出が必要になるため、患者さんのサポートも含めて医療機関だけでおこなうことは難しい可能性があります。そのため、医療滞在ビザの制度を医療機関側で理解したうえで、医療ツーリズムのコーディネーター事業をおこなっている身元保証機関などを利用すると良いでしょう。




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著者情報

多言語医療ジャーナルPORT(ポルト)編集部

メディフォンは2014年1月のサービス開始以来、医療専門の遠隔通訳の事業者として業界をけん引してきました。厚生労働省、医療機関、消防などからのご利用で、現在の累計通訳実績は10万件を超えております。「多言語医療ジャーナルPORT(ポルト)」は、メディフォンがこれまでに培った知識・ノウハウをもとに、多言語医療に携わる方々のための情報を発信するメディアです。

監修者情報・友久 甲子

友久 甲子

メディフォンの遠隔医療通訳サービスや外国人患者受入れに関する研修事業の立ち上げを経験。外国人患者受入れに関する研修・セミナーの運営や講義を数多く担当し、医療機関の外国人患者受入れ体制整備コンサルティングや外国人患者受入れマニュアルの作成支援等にも数多くの実績を有する。令和元年度・令和2年度厚生労働省「外国人患者受入れ医療コーディネーター養成研修事業」研修カリキュラムテキスト作成担当・研修講師。令和4年度厚生労働省「医療費の不払い等の経歴がある訪日外国人の情報の管理等に関する仕組みの運用支援事業」有識者委員。