mediPhone導入事例インタビュー
医療法人 徳洲会 湘南藤沢徳洲会病院様
国際医療支援室 大橋恵様
夜間や緊急時・希少言語の患者さんの対応など、
院内の通訳者では対応できない場面で医療専門の通訳を用いるために導入を決定。
国際医療に長年携わっていらっしゃる、国際医療支援室の大橋様(写真一番左)にお話を伺いました。
(2022年9月インタビュー実施)
Q. 湘南藤沢徳洲会病院様の概要と、国際医療支援室のお仕事についてお教えください。
国際医療支援室の院内掲示
当院は、病床数が419床の、地域に根差した急性期総合病院になります。国際医療支援室については、徳洲会の他の病院で既にあった国際部に続く形で2016年に立ち上がりました。
医療通訳の提供や通訳ツールの管理だけではなく、外国人患者さんの受診や入院がより円滑になるようコーディネート業務をしています。
さらに、日本人患者さんが渡航する際の書類翻訳、海外医療保険との連携や請求といった事務作業など、多岐にわたる国際的なサポートもしています。
Q. 大橋様は以前アメリカの病院で看護師として働かれていたと伺ったのですが、日米の外国人医療のとらえ方の違いについて教えてください。
大橋様
アメリカは、訴訟が多いこともあり、リスクに費用を投下する文化があります。言葉が通じない患者さんとのトラブルを減らすため、費用を投じて医療通訳を整備しています。
一方、日本は実際にトラブルが起きてから対応する場合が多く、リスク管理に対する感覚が根本的に違う部分だと思います。
Q. メディフォンを導入する前の外国人患者さんの受入れ体制と導入背景についてお教えください
受付でのご様子
来院する外国人の患者さんは、片言なら日本語を話せる方が多かったこともあり、現場でなんとか対応していました。また、必要があればソーシャルワーカーが派遣の医療通訳を依頼していました。当時は、外国人患者対応を統括する部署・窓口がなく、現場で必要性を感じたとしても、なかなか電話通訳の契約を進められませんでした。
その後、国際医療支援室を設置し英語通訳を配置しましたが、夜間休日対応は難しく、英語のみの対応だったため、他の言語も含めて対応できる電話通訳の導入に至りました。
メディフォンにした理由としては、他の徳洲会の病院で採用されていたことと、会話を録音できるため説明と同意の際のリスクを低減できることの2点です。
外国人患者さんの来院数は、月に300~350人程です。昨年度は月に200~250人程でしたので、増えています。国籍はアメリカをはじめとした英語圏や、南米諸国、そして技能実習生が多いフィリピンやベトナムなどです。院内通訳者も、現在は英語のみならず中国語・スペイン語・ポルトガル語・ベトナム語と拡充を図り、その影響で南米出身者やベトナム人の来院も増加傾向にあります。
比較的全診療科横断的に受診されますが、産婦人科の来院が多く、皮膚科や整形外科など予約なしで受診できる診療科も多い傾向にあります。
外国人患者対応には、翻訳機器と、一般の電話通訳、医療専門の電話通訳であるメディフォン、院内の医療通訳者を使い分けています。
受付や事務対応の場合は院内通訳や一般通訳、検査や診察など院内通訳者が対応できる言語・時間帯の場合は院内の通訳者、緊急を要する場合や希少言語が必要な際にはメディフォンを使うというルールにしています。また、簡単なコミュニケーションでは翻訳機器を使っています。
ただ、基準通りに運用するのは難しいです。専用タブレットや電話回線からメディフォンを利用できることは伝えていますが、実際は、外国人患者が来た場合は国際医療支援室が呼ばれることが多いです。そこで母国語は何か、他に話せる言語はあるか、どれくらい話せるのかなどを聞き取って、その言語に適した通訳サービスを使うように伝えています。
Q. メディフォンをご利用いただいた感想やご意見などをお聞かせください。
良かったことは、ダブルチェックをしていただける点です。英語の場合は医師も何を話しているのか把握できますが、他の言語の場合きちんと伝わっているのか分からない中で進んでいくため、ダブルチェック機能があることでもし間違いや不足があったとしても連絡いただけるので助かります。以前、通訳を利用したあとにメディフォンから「ここのところがもしかしたら伝わっていないかもしれない」と連絡があり、修正できたことがありました。
また、通訳記録を録音してくれる点も、リスク管理においてメリットだと感じています。
一方で、希少言語の通訳者や、希少言語の女性の通訳者の数を拡充してもらえると助かります。希少言語で特にメディフォンを使用したいのと、女性関連の疾患の際や宗教的な事情で女性の通訳者を希望されるケースもあるからです。
Q. 最後に、外国人患者受入れ体制の整備を検討する医療機関様へ向けて、アドバイスなどがあればお願いします。
湘南藤沢徳洲会病院の外観
医療通訳を導入する際は、現場職員へリスクを伝えることが重要です。医師が日本語または片言の英語でも良いとしてしまうと、医療通訳の導入にはつながりません。どういったリスクがあるのか他病院の事例も含めて周知し、言語の壁をなくすためのツールを紹介するとよいと思います。
最近では、患者さんが自分の携帯の翻訳ツールを使ってコミュニケーションを取ろうとする場合も多いですが、病院側に記録が残らないため、事実確認できないリスクがあります。
また、JMIPなどの認証取得を検討する際には、費用対効果を算出するよりも、現場でどれくらい困っているのかを調査すると良いでしょう。電子カルテをカスタマイズして外国人患者さんの来院数を把握し、現場のスタッフに聞き取りをおこなうことで必要な整備が分かると思います。
病院にとって必要な整備が明らかになれば、JMIPの測定項目と照らし合わせてどこから整備すべきか、何をどのように整備すべきか明確になるはずです。
【補足】JMIPとは
JMIPとは、Japan Medical Service Accreditation for International Patientsの略です。日本語名称は「外国人患者受入れ医療機関認証制度」となります。
外国人患者さんが安心・安全に日本の医療サービスを受けられるため、多言語、異文化・宗教に配慮した体制を整えている医療機関を認証する制度です。厚生労働省の支援事業として、一般財団法人 日本医療教育財団が運営をおこなっています。