韓国・中国・ベトナムなどの出産文化|各国の特徴と日本との違いを解説

  • 2024.08.20

    外国人患者の出産

日本に住む外国人数が増えている中、日本で出産する外国人数も増えると予想されています。妊娠・出産に関する習慣や文化は国によって大きく異なるため、医療機関は文化の違いを理解しておくことが重要です。
そこで、本記事では各国の出産文化を紹介します。

両親の一方または両方が外国人の子どもは24人に1人

以下の表は、日本で生まれた子どもの中における、父母の両方が日本人の子どもと、親が外国籍の子どもの、実数と全体から見た割合を示しています。

参考:厚生労働省|日本における外国人の人口動態 2021厚生労働省|人口動態調査_父母の国籍別に見た年次別出生率及び百分率 2021

以上の表から、父母の一方または両方が外国人の子どもの割合は4.2%であると分かります。つまり、子どもの24人に1人は親に外国人がいることになります。

こうした親が外国籍の子どもの数は今後増えていくのでしょうか。以下のグラフは在住外国人の若年層(15~34歳)の人数の推移を示しています。以下のグラフによると、在住外国人の若年層の数は男女ともに増えており、今後も外国人の出産が増えると予想されます。

引用:政府統計の総合窓口|在留外国人統計(旧登録外国人統計)12月 2013~2022年

実際に日本に住む外国人患者さんを受け入れている病院の多くで、産科での受入れが最も多いという声が聞かれます。産科では定期的な通院や産後の入院期間もあるため、混乱なく円滑に受入れをおこなうためには、出産に関する患者さんの国と日本との違いを理解しておくと良いでしょう。

これから、日本の出産の特徴といくつかの国の出産に関する制度・文化・風習についてご紹介いたします。

国際比較から見える日本の出産文化・習慣の特徴

日本人にとっては、日本の出産文化が当たり前ですが、実は日本の当たり前は世界の当たり前ではありません。日本が当たり前だという思い込みが、違う文化・習慣の国の患者さんの対応で戸惑いが生まれる原因にもなり得ます。各国と比較した日本の出産文化の特徴を見ていきましょう。

無痛分娩の実施割合の低さ

先進諸国では日本に比べて、無痛分娩をおこなう割合が高い国が多くなっています。
以下は、硬膜外無痛分娩率の各国の実施割合を表したグラフです。

引用:日本産科麻酔学会 

以上のグラフを見ると、アメリカ、フランス、イギリスなど欧米の多くの国では無痛分娩がおこなわれる割合が高い傾向にあると分かります。しかし、ドイツやイタリアなどは無痛分娩の割合はそこまで多くないと言われています。

アジアでは中国では無痛分娩はそれほど一般的ではないようですが、韓国では4割程の人が無痛分娩を選んでいるようです。

このように、日本では無痛分娩があまり一般的ではありませんが、海外では必ずしもそうではありません。外国人の妊婦さんが無痛分娩が当たり前だと考えている場合もあると理解しておくと良いでしょう。

長い入院日数

日本は産後の入院日数が長いことも特徴です。以下のグラフで各国の出産時の平均入院日数と、日本における正常分娩時の平均入院日数を表しました。

参考:OECD. Stat 2020年
日本 国民健康保険中央会(2017)『正常分娩分の平均的な出産費用について(平成28年度)』

以上のグラフより、日本の出産に関する入院日数は、OECD諸国と比較すると飛びぬけて長いことが分かります。

日本の入院日数が長い理由は以下があると言われています。
・日本における分娩費用は出産育児一時金として健康保険を持っている人に広く給付されるため、早く退院する経済的動機が生まれにくい
・自然分娩が多いため、母体への負担が重く経過観察のために入院が必要
・退院後に利用できる在宅ケアのサービスが整っていないこと
・夫の産休制度が十分に機能していない

以上に紹介した以外にも、妊産婦を支援する制度や妊婦健診の頻度、妊娠中の妊婦の健康管理の厳しさなども国によって大きく異なります。

出産に関する各国の文化

妊娠・出産に関する制度・文化・習慣は、国によって大きな違いがあり、各国の伝統や文化の影響が色濃くでる分野です。本記事では、韓国、中国、ベトナム、アメリカの出産に関する文化について紹介いたします。

韓国の出産文化

韓国の出産方法で最も多いのは日本と同じく自然分娩ですが、帝王切開がおこなわれる場合も4割程度あります。
最近では韓国の産後ケアが非常に手厚いことが知られるようになっています。韓国では産後3~4日で退院して「産後調理院」に移動し、約2週間以上過ごすことが一般的になっていると言われています。産後調理院では、マッサージや身体によい食事、運動指導や育児についての指導などがおこなわれます。
また、韓国ではミネラルが豊富などという理由でわかめスープを飲むという習慣があると言われています。

中国の出産文化

中国の出産方法でもっとも多いのは帝王切開です。
帝王切開が選ばれる理由としては、
・誕生日を選べること
・病院側にとって帝王切開の方がかかる時間が短く費用が高く、メリットがある
などがあると言われています。

中国も韓国と同様、産後の妊婦の過ごし方に特徴があります。中国の伝統的な文化には、産後の1か月の期間を「坐月子(ズオユエズ)」と呼び、その期間は家を出たりシャワーを浴びたりすることが禁止される一方、授乳以外にはほとんど起き上がらずに過ごすという文化があります。月嫂(イェサウ)という職業ができるほど一般的に広がっています。

そのため、日本に住む中国出身の方の中にも、「坐月子」の習慣を守ろうとする人がいます。ただ、一か月シャワーを浴びないことに対する抵抗感を持つ人も少なくなく、昔ながらのやり方に対して家庭内で不一致が起きることもあります。

ベトナムの出産文化

ベトナムでは出産方法として帝王切開が選ばれる割合が増えていると言われています。その理由としては、
・経済成長により費用をねん出できる人が増えた
・妊婦健診をきちんと受けられる機会が増え、ハイリスクの発見や診断ができるようになってきている
・出産日を自分で決めたいため
などがあると言われています。

また、自然分娩は1〜2日、帝王切開の場合5日程度入院するのが一般的です。

なお、ベトナムでは都市部と地方、また経済状況によって対応や考え方が異なる点が多いため、一概に傾向を述べることは難しくなっています。

アメリカの出産文化

アメリカでは、出産方法では麻酔を使って陣痛の痛みを緩和する無痛分娩を選択する場合が半数以上と言われています。
また、アメリカでは出生前検査(NIPT)を約6割の人が受けると言われています。ただ宗教的に中絶を忌避する人も多く、州によって受けられるかどうかが異なります。

出産後については、2日ほどで退院することが一般的です。これは、アメリカでは医療費が高く、保険で払われるのが2日であることが通常であるという事情もあると考えられます。

出産文化における各国と日本の違いから、対応で留意すべき点

以上で日本と各国における出産に関連する文化の違いについて紹介しました。次に、文化の違いを踏まえて、外国人の妊婦さんが来院して医療機関が対応する際のポイントを解説します。

出産前の支援

外国人の妊婦さんは、特に日本語が不自由な方の場合、まず日本の妊婦さんに関する支援制度やルールを知らないことも少なくありません。日本では、母子手帳は全ての人がもらえますし、出産一時金は公的な健康保険を所有している場合、受けることができます。

こうした妊婦さんに関する日本の支援制度や、外国人の妊婦さんに伝えると良い多言語の資料については、以下の記事で紹介しております。ぜひご活用ください。

また、一般的な出産方法などが国によって大きく異なるということを紹介しましたが、本記事で紹介したのはあくまで国全体における傾向や一部の人が持つ習慣ですので、日本人と同じように必ず本人にどのような出産方法を望むかを聞いて対応すると良いでしょう。

出産後の支援

出産後には様々な書類手続きをする必要があります。特に両親とも外国籍の場合は、出生届の他に在留資格の取得や本国への登録等が必要になるため複雑ですが、日本語を話せない妊婦さんの場合、手続きの仕方をよく分かっていないことも少なくありません。本人や家族に、日本の役所への出生届の提出の他に、出入国在留管理局や大使館で手続き方法を確認するように伝え、漏れなく対応してもらえるようにしましょう。

以下の記事で外国人の間に生まれた子どもはどの在留資格を取得できるのかを解説しています。ぜひご活用ください。


出産文化の違いの理解により、外国人の妊産婦さんと医療機関の双方の不安を解消

妊娠・出産に関しては、国による習慣や考え方が大きく異なり、外国人の妊産婦さんが日本の妊娠・出産で戸惑うことも少なくありません。医療機関にとっても、予想外の要望が出て、対応に困るケースもあるでしょう。
こうした事態をできるだけ防ぐために、受診や入院の多い外国人妊産婦さんの出身国の出産に関する文化を知っておくことが助けになります。

また、妊娠・出産に関する希望を聞き取る際、妊産婦さんが日本語が得意でない場合は医療通訳者による通訳を利用すると良いでしょう。医療通訳者は言語のプロであり細かいニュアンスも捉えて通訳をしてくれるだけでなく、国ごとの文化・習慣などについても知識を持っているため、よりスムーズに医療機関と患者さんの橋渡しをすることができます。医療通訳者の派遣依頼や、通訳者の雇用が費用や立地などの条件的に難しい場合は、遠隔医療通訳サービスを利用することで、しっかり妊産婦さんとコミュニケーションをとることが可能です。


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著者情報

多言語医療ジャーナルPORT(ポルト)編集部

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