医療滞在ビザの申請に必要な書類とは?医療機関向けに申請の流れを解説

  • 2024.09.30

    医療ツーリズム

医療滞在ビザの申請は、身元保証機関がおこなう業務ですが、申請に必要な書類の中には医療機関が発行する必要のあるものもあります。
本記事では医療滞在ビザの取得までの流れと、申請に必要な書類について解説します。

医療滞在ビザとは?

医療滞在ビザは、日本で入院して治療等を受けることを目的として訪日する外国人及び同伴者に発給されるビザです。医療ツーリズムで来日する方がよく利用します。
外務省や経済産業省などでも「医療滞在ビザ」という名称で説明がされていますが、厳密に言うと「特定活動」というビザにおける医療滞在目的のものを指します。

医療滞在ビザは、病状により最大1年間の滞在が可能です。また、必要に応じて、3年間有効な数次ビザが発行されたり、同伴者にも同じ条件のビザが発行されたりするため、長期間の治療が必要な患者さんには非常に有用なビザです。

良い条件のビザとなるため、取得条件などは短期滞在ビザなどに比べて厳しく設定されており、医療滞在ビザの申請には医療機関の協力も不可欠です。本記事では、医療滞在ビザの申請の流れと、申請に必要な書類の中で医療機関が作成に関係する書類を説明します。

医療滞在ビザ取得の流れ

外国人患者さんが外国にいて、これから医療ツーリズムで90日以上滞在する場合、医療滞在ビザの取得までの流れは以下となっております。

1. 医療ツーリズムの受入れが決定する
(身元保証機関を中心に『医療機関による受診など予定証明書及び身元保証機関による身元保証書』を作成し外国人患者等に送付)
2. 在留資格認定証明書交付申請に必要な書類を作成、入国管理局に提出する
3. 申請が受理され、在留資格認定証明書が発行される
4. 在外公館で査証申請をおこなう(医療機関による受診など予定証明書及び身元保証機関による身元保証書などが必要)

短期滞在の場合は日本の入国管理局に書類を提出する必要がないため、短い手続きで取得できます。一方、医療滞在ビザで入院を前提として90日以上滞在する場合は、入国管理局に必要書類を提出し、在留資格認定証明書を交付してもらう必要があります。

また、注意点としては、医療滞在ビザの取得には必ず身元保証機関(登録医療コーディネーター)が必要です。身元保証機関とは、官公庁もしくは経産省にて所定の基準を満たしていると認められた事業者です。身元保証機関の一覧は、外務省|身元保証機関(登録医療コーディネーター等)のリスト(英語リスト)からご覧いただけます。

【補足】代理申請について

なお、医療滞在ビザの在留資格で日本への入国を希望する場合、在留資格認定証明書交付申請は、日本の入国管理局に申請する必要があります。そのため、基本的に本人以外の代理人がおこなう必要があります。

以下に申請代理人の規定について出入国在留管理庁のHPの記載を紹介します。

(1)申請人が患者である場合
・申請人の入院予定先である病院等の職員
・日本に居住する申請人の親族

(2)申請人が付添人である場合
・付添い対象となる患者本人
・同患者の入院予定先である病院等の職員又は日本に居住する同患者の親族
引用:出入国在留管理庁|在留留資格「特定活動」(医療滞在及びその同伴者)

患者さんから在留資格認定証明書の代理取得について依頼がある場合には、任意様式の入院予定証明書などの必要書類を作成の上、法務省入国管理局に提示して在留資格認定証明書を取得して、身元保証機関に送付する必要があります。

医療滞在ビザの申請に必要な書類

医療滞在ビザの申請の際は、①在留資格認定証明書交付申請と②査証申請の2回書類提出の必要があります。それぞれで必要な書類について解説します。

①在留資格認定証明書交付申請に必要な書類

入国管理局に対しておこなう在留資格認定証明書交付申請に必要な書類の一覧を以下に示しました。

患者と付添人に共通の書類1)在留資格認定証明書交付申請書
2)写真(縦4cm×横3cm)1枚
3)返信用封筒(簡易書留用)
医療滞在ビザに必要な書類(患者)1)日本の病院が発行した受入れ証明書
2)入院先の病院などに関する資料(パンフレットなど)
3)治療予定表
4)入院前あるいは退院後の滞在先と連絡先を記載した資料
5)滞在に必要な費用を支払えることを証明する資料
・病院などへの前払い金、預託金などの支払済み証明書
・民間医療保険の加入証書と約款の写し
※加入する医療保険による支払いが立証できるもの
・預金残高証明書
・スポンサーや支援団体内などによる支払い証明
付添人に必要な書類1)滞在日程
・滞在場所
・連絡先
・付添い対象者との関係などを説明する資料
2)在留中の一切の経費が支払えることを証明する資料
引用:出入国在留管理庁|在留留資格「特定活動」(医療滞在及びその同伴者)


医療滞在ビザに必要な書類の1~3が基本的に医療機関が関係する書類になっています。それぞれの様式については以下で解説します。
また、医療滞在ビザに必要な書類の5)にある通り、医療滞在ビザの取得には、医療費の支払い能力が条件になっています。つまり、医療機関が滞在の際にかかる費用を事前に提示する必要があります。

なお、厚生労働省ではフィリピン・ベトナム・中国・インドネシア・ネパール・ミャンマー国籍の方で中長期の在住のために来日する人に対して、入国前の結核スクリーニングを実施する予定です。スクリーニングが実施されると、在留資格認定証明書交付申請の際、日本政府が指定する医療機関が発行する結核非発病証明書の提出が必要となります。

詳細については、厚生労働省|健康・医療入国前結核スクリーニングの実施についてから確認できます。

【補足】医療費の事前提示について

医療滞在ビザの取得の前に、医療費の事前提示が必要になります。ただ、患者さんが医療機関を決定する際に、医療費の概算見積もりの提示が求められるケースが多いのが現状です。
そのため、外国人患者さん、あるいは身元保証機関から患者さんの医療情報などを手に入れて受入れを検討する際に、医事課などが中心となって医師などと連携し、治療内容や入院予定期間から概算見積費用を作成すると良いでしょう。

ただし、見積もりを提示したとしても他の国や病院と比較した結果、実際には受診されないケースも少なくありません。医療機関では、治療に関する概算見積もりを作成するにも医師を含めた多くのスタッフが検討に時間をかける必要があります。
そのため、最近では患者さんから詳細情報を受け取った上で、治療計画を検討し、受入れ可否を判断し、概算見積もり金額を説明すること自体を有償でおこなう医療機関も出てきています。

②医療滞在ビザ(査証)の申請に必要な書類

在外公館に医療滞在ビザ申請をおこなう際に必要な書類の一覧は以下の通りです。

患者と同伴者に共通の書類1)旅券
2)写真
3)ビザ申請書
4)本人確認のための書類
患者が提出する書類5)医療機関による受診等予定証明書及び身元保証機関による身元保証書
6)一定の経済力を有することを証明するもの(銀行残高証明書など)
7)在留資格認定証明書(90日以上の滞在が必要な場合)
8)治療予定表(数次にわたり治療のために訪日する必要がある場合)
引用:医療滞在ビザを申請される外国人患者等の皆様へ|外務省

なお、本人確認のための書類と、一定の経済力を有することを証明するものは、国籍により提出する書類が異なるため、具体的な提出書類については、申請先の大使館や総領事館に問い合わせる必要があります。

医療機関が関係する、医療滞在ビザの申請に必要な書類4つ

医療滞在ビザの取得については、基本的に身元保証機関が主体となっておこなうものですが、一部医療機関が発行する必要があるものがあります。医療滞在ビザの取得までに必要となる書類で、医療機関が関係するものについて1つずつ解説していきます。

1. 外国人患者受入れに係る証明書

「外国人患者受入れに係る証明書」は、「在留資格認定証明書」取得のために入国管理局に提出する書類です。
病名や治療内容、入院・治療の予定機関、必要経費の見込み額を記載する必要があります。
「外国人患者受入れに係る証明書」は「在留資格「特定活動」(医療滞在及びその同伴者)」からご確認いただけます。


2. 入院先の病院等に関する資料(パンフレットなど)

「入院先の病院などに関する資料」は、「在留資格認定証明書」取得のために入国管理局に提出する書類です。
特に書式などは定められていません。

3. 治療予定表

「治療予定表」は、「在留資格認定証明書」の交付申請の際に必要となります。また、医療滞在ビザを数次ビザとして申請する場合、提出が必要になります。
「治療予定表」の書式は自由です。

1. 「外国人患者受入れに係る証明書」や2. 「入院先の病院等に関する資料」、3. 「治療予定表」は、作成後、外国人患者さんが日本にいる場合は、身元保証機関を通じて外国人患者さんに送付し、外国人が在留資格認定証明書の申請をおこないます。外国人患者さんが日本にいない場合については、外務省のサイトでは以下のように記載されています。

身元保証機関の職員が、在留資格認定証明書の交付申請において代理人となることはできませんが、同申請について申請者(外国人患者)又は代理人(医療機関の職員又は本邦に居住する本人の親族)に代わって、行政書士会を経由して地方入国管理局長に届け出た行政書士が申請の取り次ぎを行うことは可能です。
引用:「医療滞在ビザ」の身元保証機関になられる方々へ


数次ビザとは有効期間内であれば、何度でも出入国が可能なビザのことです。必要に応じて、数次ビザの申請が可能です。医療機関は、「医療機関による受診等予定証明書」を作成する際、患者さんの医療情報や治療内容から数次ビザが必要かどうかを判断することが求められます。
しかし、数次ビザが発給されるのは、1回の滞在期間が90日以内の場合のみです。数ビザを申請する場合は、医師による「治療予定表」の提出が必要になります。

4. 受診等予定証明書

「受診等予定証明書」は「身元保証機関による身元保証書」と一緒に、「医療機関による受診等予定証明書及び身元保証機関による身元保証書」として1枚の書類になっています。
この書類は、医療滞在ビザの取得のために、在外公館または総領事館に提出する必要があります。
作成は基本的に身元保証機関が中心となっておこない、外国人患者さんに送付します。

医療機関による受診等予定証明書及び身元保証機関による身元保証書の雛形は「医療滞在ビザ」の身元保証機関になられる方々へ|外務省からご確認いただけます。


医療滞在ビザの取得の流れや必要書類を理解し、円滑な医療ツーリズムの受入れを

本記事では、医療滞在ビザの取得申請に必要な提出書類について解説しました。医療ツーリズムを希望する患者さんの受入れをおこなう場合、医療滞在ビザの取得のための書類の作成を依頼される場合があります。慣れない場合は、身元保証機関(コーディネーター事業者)に確認をしながら進めると良いでしょう。

医療ツーリズムのコーディネーター事業者は、患者さんとのマッチングだけではなく、支払い保証や旅程の手配、滞在先のサポートや通訳・翻訳、患者さんの問い合わせ対応などをおこないます。

医療ツーリズムのコーディネーターについては以下の記事で解説しております。ぜひご活用ください。


医療ツーリズムの市場規模や注目されている理由についてまとめた資料がございますので、お役立ていただけますと幸いです。

著者情報

多言語医療ジャーナルPORT(ポルト)編集部

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