外国人患者受入れ体制整備の進め方と主な取り組み6つを紹介!

  • 2024.05.10

    外国人患者

日本にいる外国人数の増加により、医療機関で外国人患者さんを受け入れる機会も増加していくと想定されます。

本記事では、外国人患者さんを安全かつ円滑に受入れるための体制整備の進め方や具体的にするべきことを解説していきます。

外国人患者受入れ体制整備が重要に

新型コロナウイルス感染症が拡大する前、日本にいる外国人数は右肩上がりに増加しており、コロナ禍で一度落ち着いていました。しかし、現在再び外国人数が増加の兆しを見せています。そのため、外国人患者さんを受け入れる医療機関も増えてくると想定されます。

訪日・在住外国人数が増加中

日本政府観光局(JNTO)の2023年7月の発表によれば、2023年6月の訪日外国人数は200万人を突破しました。これは、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた2022年2月以降初めてでした。さらに、2023年の累計の訪日外国人の数は2500万人を超え、コロナ禍前の8割程度まで回復が進んでいます。

在留外国人の数は2012年から2019年まで右肩上がりに増加し、コロナ禍で一度落ち込みましたが、令和6年3月22日の出入国在留管理庁の報道によれば2023年末には340万人を突破し、過去最高を記録しています。

上記を踏まえると、訪日・在留外国人の増加は明らかであり、医療機関に来院する外国人患者さんの数も増加していくと想定されます

外国人患者を受け入れたことのある医療機関は50%以上!

実際に外国人患者さんを受入れたことのある医療機関はどれくらいあるでしょうか。厚生労働省が実施している「医療機関における外国人患者受入れに係る実態調査」によれば、令和4年の調査において、回答した医療機関の50%、実数値では2,300以上の医療機関が外国人患者の受入れの経験があると回答しています。
日本にいる外国人が増える中、医療機関においては、外国人受け入れのための体制整備をおこない、いつどんな状況にも安心して対応できるようにするとよいでしょう。

外国人患者受入れ体制整備の3STEPs

以下の図は、外国人患者受け入れ体制の整備における3つのステップを示しています。


外国人患者受入れ体制の整備を始める際は、まず現状の把握が重要です。
例えば、以下の数値について把握しておくと良いでしょう。しかし、現実には、外国人の来院データをとっていない場合がほとんどです。正確な数字でなくても、来院頻度などを担当者に確認したり、1ヶ月間試しに数えてもらうなど、おおよその数の把握でも最初は構いません。

・外国人患者の人数
・外国人患者の国籍・言語ごとの来院人数
・外国人患者の種類(訪日外国人・在留外国人・渡航患者)ごとの来院人数
・外国人患者の「診療科」「外来・入院」「救急・救急ではない」それぞれごとの人数

数値的な現状をおおよそ把握した後は、各現場へのヒアリングなどで現状の対応方法と発生している課題がどのようになっているのかを把握しておきましょう。

現状を把握できたら、それをもとに、具体的な受入れ体制整備方針を検討していきます。以下が決めておくと良い体制整備方針の一例です。

・組織体制の整備(外国人患者受入れ医療コーディネーターの設置検討など)
・多言語化
・通訳体制の整備
・院内文書・院内表示・ホームページの多言語化
・外部機関(医療機関、関係機関)との連携
・リスク(感染症など)への備え
・異なる文化・習慣・宗教に対する配慮
・外国人患者さんに対して、医療費の支払いの支援
・医療費の設定

方針が決まったら、それに沿った具体的な手順やルールを決め、最後に、外国人患者受入れに関するマニュアル等を作成し、院内に周知していく流れをとるのが一般的な流れです。

本記事では、以上の項目をまとめながら、受入れ体制整備の進め方を解説していきます。

外国人患者受入れに関する組織体制整備の進め方

外国人患者の受入れ体制整備は、医療も事務も関わり、全院的な取り組みになります。
例えば、誰か一人が体制整備の担当として指名された場合も、その担当者1人で進められることは非常に限られています。どんな外国人がどれぐらいきているのか、現状の対応方法と発生している課題は何か、という現状がおおよそ把握できたら、それを踏まえて、どのような場で外国人患者受入れ体制整備について話していくかをまず検討します。

本腰を入れて取り組む場合は、専門の部署を作る医療機関もありますが、多くの医療機関ではプロジェクトチームや委員会という形で議論の場を立ち上げて検討を始めます。そのプロジェクトチームや委員会のメンバーには、組織全体の意思決定をするような会議や委員会にも参加するレベルの役職者も含めておくと良いでしょう。
外国人患者受入れの委員会で決めたことを、幹部会議などで議題にあげ、組織として承認をとっていける流れを意識的に作っておくことで、体制整備を円滑に進められます。

医療機関が外国人患者を受け入れる体制の整備を進めるにあたって、外国人患者を安全かつ円滑に受け入れるための調整役を担う医療機関職員は「外国人患者受入れ医療コーディネーター」と呼ばれています。2019年度から、厚生労働省は「外国人患者受入れ医療コーディネーター養成研修」を実施しており、外国人患者受入れに関するノウハウを提供しています。

外国人患者さんを受け入れるための主な取り組み6つ

外国人患者さんを受け入れるための取り組みとしては、主に以下の6つが考えられます。それぞれ詳しく解説していきます。

1. 多言語化

外国人患者さんの中には、日本語での意思疎通が難しい人も少なくありません。外国人患者さんの受入れを円滑にするために、多言語化は重要です。
医療機関における多言語化は、①医療通訳体制の整備、②院内資料や案内表示の翻訳をおこなうこと、の2点があります。それぞれどのように進めていくのかについて解説します。

【補足】通訳と翻訳の違い
通訳とは、話された言葉を聞いて、異なる言語に言い換えることを指します。翻訳とは、書かれた言葉を読んで、異なる言語に書き換えることを指します。
最近では、グーグル翻訳などの話し言葉を文章に変換し、さらに機械がその文章を別の言語に書き換え、書き換えられた文章を音声にするツールも登場しています。この場合は、最初の入力が音声であったとしても、文字情報から別の言語への変換をおこなっているので翻訳に該当します。機械が翻訳をおこなっているものは機械翻訳と呼ばれます。

医療通訳体制整備の重要性

通訳については「うちは、日本語のできる人を連れてきてもらっているから大丈夫」とお考えの医療機関も少なくありません。しかし、家族や友人・同僚あるいは院内の語学堪能職員による通訳だと、医学的概念が正しく伝わらない、医師の話した内容を変更・抑制・歪曲して伝えるなどの様々なリスクがあると指摘されています。

厚生労働省「外国人患者受入れのための医療機関向けマニュアル」では、家族・友人・職員通訳のリスクを踏まえ、医療安全の観点から、医療通訳のトレーニングを受けた通訳者にいつでも通訳を依頼できるような「医療通訳体制」の整備を推奨しています。

以下の記事に、家族・友人・職員による通訳のリスクと医療通訳について詳しく解説いたしました。ぜひご活用ください。

医療通訳体制の整備方法

先述の通り、外国人患者さんの対応をおこなう全ての場面で医療通訳のトレーニングを受けた通訳者に通訳してもらうことが理想ですが、費用や通訳者の数にも制限があることから、難しいのが現状です。

近年では、機械による翻訳ツールも普及しており、人による通訳以外にも様々な種類が考えられます。一方で、それぞれの通訳ツールにはメリット・デメリットがあります。いくつかある通訳手法の特徴を把握し、適切な場面で適切な通訳手法を利用できるようにすることが重要です。

以下に通訳手法の種類と、その特徴を簡単に記した表を記載しました。

厚生労働省|外国人患者の受入れのための医療機関向けマニュアルより作成

厚生労働省の「外国人患者の受入れのための医療機関向けマニュアル」では、診察や検査結果の説明、手術の説明の場面など、高度な医療用語が用いられるような場面では、医療に特化した通訳者による医療通訳の利用が推奨されています。
一方、受付などの定型的な内容の会話をおこなう場面では、機械翻訳や指さしツールが活用できます。

遠隔医療通訳サービスの選び方については、以下の記事で解説しております。ぜひご活用ください。


院内資料・案内表示などの翻訳

日本語が話せる外国人の方であっても、漢字を読むのが難しい方も多くいらっしゃいます。実際に、日本語が堪能な在住の外国人患者さんの受入れの際に、会話に問題がないため通訳をつけず、資料も日本語を渡したところ、読み書きは苦手で資料の内容の理解ができなかったという事例も報告されています。

外国人患者さんの受入れを安全かつ円滑におこなうためには、院内の資料全てが翻訳されていることが理想ですが、全ての文書を翻訳することは現実的ではありません。そのため、簡単な内容については写真やイラストを使って言葉がわからなくても理解できるように工夫をするなどし、翻訳は使用頻度・重要度(医療安全に関わるかどうか等)の観点から優先度を整理し、優先度の高い文書から取り掛かると良いでしょう。

例えば、全員に必要な初診申込書や院内案内図、受診の多い診療科の同意書などが一般的に優先度が高いものとして挙げられます。また、見落としがちですが、立ち入り禁止区域の表示なども患者さんの安全確保のために重要です。

なお、どの医療機関でも共通して使用される、問診表や会計時の請求書などの資料は、厚生労働省等からインターネット上に様々翻訳資料が公開されています。すべての文書を一から翻訳するのではなく、適宜、こうした公開文書を活用しながら多言語化を進めると、医療機関の負担が少なくなります。厚生労働省の補助事業で制作されている「外国人患者受入れ情報サイト」の多言語ツール一覧ページで、様々な多言語資料が紹介されていますので、ぜひご活用ください。

2. 外部機関との連携

外国人患者さんの受入れを円滑におこなうためには、他の医療機関や行政機関、通訳団体など様々な外部機関との連携・協力が必要になります。自院では、どのような外部機関との連携が必要になるかを考え、連携・協力関係の構築の方法について外部機関と話し合いを進めるとよいでしょう。

多様な外部機関との連携

一般に、外国人患者受入れに関して、連携・協力が必要となる外部機関の一覧と連携内容について以下の表に記載いたしました。

行政機関地域の在留・訪日外国人旅行者の医療対応関連施策の実施・相談・情報交換
出入国在留管理庁ビザの延長・在留資格確認に関する情報提供・情報確認など
警察署事故や在留資格に関する情報提供
消防機関外国人の救急医療関連の連携
在日公館(大使館・領事館など)母国との連絡・医療搬送・事務手続きサポート、情報交換など
保健所感染症患者の報告
地域の医療機関言語対応などにも配慮した紹介
地域の医師会や医療団体地域/会員医療機関の外国人医療の情報共有・サポート医療通訳サービスの共同利用体の場合も
薬局処方薬の購入、処方箋が必要な薬を購入するための紹介等
医療派遣通訳団体遠隔医療通訳団体契約、サービス利用
医療アシスタンス会社患者の情報収集・通訳手配、保険会社に代わって医療費の支払い保証、医療搬送・遺体搬送手続きなど
海外旅行保険・その他保険会社診断費・治療内容等に関する問い合わせ、ダイレクト・ビリング等
宿泊施設・観光事業者外国人宿泊者が医療機関受診を希望した場合の情報提供など

地域の医療機関・保健所・自治体などは、日本人の患者さんの対応の際にも連携の必要が発生するでしょう。しかし、外国人患者さんの対応の際に特有の連携先もあります。

外国人患者特有に発生する外部連携

外国人患者さん特有に発生する外部連携先としては、大使館・入国管理局・保険会社や医療アシスタンス会社などが考えられます。

大使館との連携は、
・通訳の確保に関する相談
・外国人患者さんの本国にいる家族への連絡
・日本で生まれた子供のパスポートの取得
・医療搬送をおこなう際の本国側の手配
・医療費の支払いに関する相談
・外国人患者さんに分割払いなどの誓約書を書いてもらう際の同席要請

などがあります。

どこまで協力してくれるかは、国や担当者によって大きく異なります。必ず協力してもらえるわけではありませんが、困難ケースでは早めに相談を始めておくと良いでしょう。

また、通常、医療機関から連絡するよりも、自国民である患者さんやご家族から相談した方がスムーズな場合が多いと言われています。可能な場合は、患者さんやご家族から連絡してもらうようにすると良いでしょう。

入国管理局との連携は、来院した外国人患者さんのビザが切れそうな場合や切れている場合などに必要になります。例えば、病気治療による入院などのため在留期間を延長する場合は、入国管理局に短期滞在ビザの更新手続きをおこなう必要があります。この際、医師の診断書が必要であり、患者さんから求められた場合は診断書など必要な書類の作成をおこなうのが良いでしょう。
一方で、医療的に必要性が高くないにも関わらず、滞在期間延長のための書類作成を患者さん側から求められるケースなどでは、医療機関として必要性がないと判断して、入国管理局向けの書類作成を断ることもあります。

3. リスクへの備え

外国人患者さんを受け入れる際に、気を付けるべき4つのリスクとその対策について解説いたしました。

感染症

海外との人の行き来が増えると、日本では近年流行のなかった病気や新型ウイルスの患者さんが医療機関に訪れる可能性が増えます。特に、近年は、中国や東南アジア・南アジアなど、日本で蔓延していない感染症が蔓延している国からの入国者が増えています。

感染症の例としては、訪日外国人患者さんから麻疹が流行したケース、在留外国人の中で水疱瘡や風疹が流行したケースなどが報告されています。また、外国人患者さんに多い感染症として結核があります。外国出身の方は、日本人とは予防接種歴が異なる場合が多いことも意識して備えておくことが重要です。

医療機関で外国人患者さんの感染症対策を考えるポイントについては、以下の記事で解説しております。ぜひご活用ください。

法的課題

外国人患者受入れの際には、言語や文化・習慣などが異なることからコミュニケーションが難しくなり、どうしても医療安全リスクが日本人に比べて高くなりがちです。医療安全レベルが下がらないように、適切な体制整備をおこなうことが最も重要ですが、体制が整っていても医療紛争などが発生するリスクはゼロにはなりません。リスクがゼロではないこと自体は日本人と同様ですが、外国人患者さんの場合、海外で裁判を起こされてしまう可能性が出てきます。
そのため、外国人患者さんとの医療紛争に備え、日本人とは異なる対策を取っておく必要があります。

外国人患者さんの場合は、医療紛争が起きた場合に日本人の患者さんとは異なる対応が必要になる可能性があることや、事前防止策の必要性などを院内に共有し、医療安全の担当者や顧問弁護士などと協議してもらえるように働きかけましょう。「外国人患者の受入れのための医療機関向けマニュアル」の93ページ以降の医事紛争の項で、詳しく説明がされています。

国際医療搬送

短期滞在の訪日外国人患者さんの場合、医療や介護の必要な状態のまま母国や第三国への退院・転送が必要となるケースがあります。例えば、急性期の治療を終え、回復期以降は母国の病院で過ごしたい・入院が長期化して支払いが高額になることを避けたい・付き添いする家族の来日や長期滞在が難しいため帰国したい・回復の見込みがないため、母国で看取りをしたい等の理由です。
治療が必要な状態で患者さんを転院させるためには、搬送可能なタイミングを逃さないことが重要です。

しかし、外国人患者さんの場合は、言葉の問題などから家族への提案や説明が遅れやすい傾向にあります。外国人患者さんの場合は、国際医療搬送(海外への転院)の選択肢があり得ることを把握しておき、関係者で情報共有を進め、早期に家族の意向を確認するように意識しましょう。

患者さんやご家族の意向の確認ができたら、転院先の選定・受入れ確認のほか、保険会社・航空会社・大使館等への連絡が必要です。転院先は、その患者さんを受け入れられる病院かどうかと家族の希望をもとに、患者さんとご家族、担当者・保険会社等が連携して選定していくことになります。

また、航空機での搬送の場合は、患者さんの状態によって搬送方法が大きく異なり、搬送方法により、費用も大きく異なります。患者さんの旅行保険や医療保険で搬送費もカバーできる場合には問題になりませんが、もし保険での支払いがない場合、搬送費を自己負担できるかどうかも確認の必要があります。

このように国際搬送については、複雑な対応が必要になりますので、平時から万が一に備えて、情報を集め、院内のルールを決めておくことが重要です。

災害対応

日本は災害大国と言われており、万が一に備えて外国人患者さんの避難誘導ができる準備をおこなうことも重要です。外国人患者さんの中には、日本のように避難訓練をおこなう習慣のない国の出身の人も多いため、パニックを起こすことがないよう、多言語で指示や誘導ができるようにすると良いでしょう。

具体的には以下の対策が考えられます。
・フロアマップや避難経路の多言語表示
・避難誘導のための多言語ツール(指さしシートやプラカード)の作成
・外国人患者さんを想定した避難訓練の実施

避難誘導のための多言語ツールに関しては、様々な自治体や外国人支援団体などから無料で公開されています。必ずしも医療機関向けではありませんが、使える文言が多く記載されていますので、活用するのも良いでしょう。

4. 異なる文化・習慣・宗教への対応

外国人患者さんは、日本とは異なる文化・習慣・宗教がある場合も少なくなく、日本人患者さんとは異なる対応が求められる場合があります。

文化・習慣・宗教への対応にあたっての考え方

文化や宗教は患者さんの行動に影響する重要な要素です。外国人だから文化や宗教への配慮が特に必要なのではなく、その患者さんに日本人の患者さんと変わらず、適切な医療を提供するために、考慮すべき一要素です。患者さんの文化や宗教を尊重することも重要ですが、外国人患者さんの「すべて希望通りに」「理想的な対応」をすることが異文化対応の目的ではありません。
医療機関の設備や人員・予算の問題から、対応しきれないことも当然発生します。

医療を受ける上での阻害要因や医療安全上の問題となること、あるいは、他の患者さんに不快や不安を抱かせる要素があれば、医療機関としての対応を明確にしましょう。外国人患者さんやそのご家族に、できること・できないことを明確に説明し、後から大きなトラブルに発展しないように事前に調整をおこなうことが重要です。

異なる文化・習慣・宗教に、どのような対応が必要なのかについては、主に以下の記事で解説しております。ぜひご活用ください。

5. 外国人患者に対する医療費の支払い支援

外国人患者さんの医療費の未払いに関しては、経済的な事情など日本人患者さんと同様の要因の他に、医療制度の違いなど外国人患者さん特有の背景が要因となる未払いが発生する場合があります。外国人患者さん特有の背景を要因とする未払いについては、適切な対策による未払い防止効果が高いと知られています。

例えば、日本と海外では医療制度や会計までの流れが大きく異なることなどから、外国人患者さんに支払う意思・支払う能力があったとしても未払いになってしまうケースがあります。
こうした未払いは、対策をすることで未収金を減らせることが先進機関の事例で明らかになっています。逆にいうと、適切な対策を打っていないと、防止できる未収金が発生してしまいます。特に、海外在住の外国人患者さんの場合、帰国されてからの督促には多くの困難が伴いますので、適切な対策を講じて、未払いを発生させないことがとても重要です。

外国人患者さんの医療費の未払いを防止するためには、
・本人確認として、パスポートや在留カード等の写真付きIDを確認する
・加入している保険について詳細な確認をおこなう
・診療費の概算提示を事前におこなう
・クレジットカード等のキャッシュレス払いに対応する
などがあります。

以下の記事で外国人患者さんの医療費未払いを防ぐための対策をまとめましたので、ぜひご活用ください。

6. 外国人患者の自由診療の場合の診療価格の設定

公的保険に未加入の外国人患者さんの診療費は、自由診療であるため医療機関で自由に設定できます。しかし、診療価格をどう設定するのかは難しい問題であることも少なくありません。

厚生労働省は、『外国人患者の受入れのための医療機関向けマニュアル』において以下のように記載しています。

外国人患者の受入れを円滑に行うためには一定の費用をかけて通訳体制や院内環境を整備する必要があります。また、特に訪日外国人旅行者患者の場合には、(中略)保険会社や医療アシスタンス会社とのやり取りなど、公的医療保険の対象の患者では生じないような事務的・時間的負担が発生します。
そのため、自院において外国人患者の受入れ体制を整備し、経営的にも安定してその体制を維持していくためには、その費用等をきちんと反映した診療価格を設定し、訪日外国人旅行者患者等に対してはその設定された診療価格に基づいて医療費を請求していくことも検討が必要です。

引用:厚生労働省「外国人患者の受入れのための医療機関向けマニュアル


自院の外国人患者さんの受入れ体制整備にかかる費用なども踏まえて、医療費の設定をどうするのか検討していくとよいでしょう。
外国人患者さんの医療費の設定については以下の記事で解説しましたので、ぜひご活用ください。

外国人患者受入れ体制整備の好事例

外国人患者さんの受入れ体制整備の好事例につきましては、厚生労働省の補助事業として弊社メディフォンが運営している「外国人患者受入れ情報サイト」にて好事例インタビューを掲載しております。
全国各地の事例を掲載しておりますので、ぜひご活用ください。

外国人患者受入れに関する認証制度

外国人患者受入れ体制の整備状況を評価する認証制度がいくつかあります。代表的なものに、一般財団法人日本医療教育財団を実施主体とする「外国人患者受入れ医療機関認証制度」(Japan Medical Service Accreditation for International Patients: 以下JMIP)があります。JMIPは厚生労働省が平成23年度に実施した「外国人患者受入れ医療機関認証制度整備のための支援事業」により、外国人患者さんの方が安心・安全に医療サービスを享受できるようにするために創設されました。2024年4月23日現在、68の医療機関が認証を取得しています。

また、医療機関のための外国人患者受入れに関する認証制度として「ジャパンインターナショナルホスピタルズ(JIH)というものもあります。こちらは医療ツーリズムの受入れに積極的であり、受入れ体制の整った医療機関を海外に発信することを目的としている認証になり、目的・意図は大きく違います。
外国人患者受入れに関する認証取得を目指すことで、外国人患者受入れ体制整備を院内全体を巻き込んで進めることにつながります。また、認証取得を目指すのが難しい場合でも、JMIPのウェブサイトに掲載されている評価項目や認証のために必要な資料を確認することで、外国人患者受入れ体制整備の参考になるでしょう。

JMIPの概要や取得のメリットなどを解説した記事は以下になります。ぜひご活用ください。

外国人患者受入れ体制を整備して、安心して外国人診療ができる環境を

日本にいる外国人の数が増加している中、医療機関で外国人患者さんの対応をする機会も増加していくと想定されます。現場の臨機応変な対応だけではなく、医療機関全体として体制を整備していくことで、より安心・円滑な受入れが可能になります。
受入れ体制整備として医療機関にできることは様々ありますが、自院の状況に合わせた体制整備が重要です。自院の外国人患者さんの数などを把握し、現場で対応している職員から聞き取りをおこなうなどして、必要な体制整備を進めるようにしましょう。そこで、体制整備を包括的に取りおこなうべき場合は、認証の取得も検討するとよいでしょう。





メディフォンでは、医療機関の外国人患者受入れ体制の整備を総合的にご支援しております。機械翻訳・医療通訳サービスの提供にとどまらず、院内資料・院内表示の翻訳、未収金の対策やJMIPの取得支援、その他様々な外国人患者対応のご支援が可能です。もし外国人患者さんの受入れ体制整備でお困りのこと等ございましたらお気軽にお問い合わせください。

医療通訳対応10万件以上の実績をもち、全国約88,000の医療機関でご利用いただける、医療に特化した多言語通訳・機械翻訳サービス「mediPhone(メディフォン)」のサービス資料は以下からダウンロードできますので、ぜひご活用ください。


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著者情報

多言語医療ジャーナルPORT(ポルト)編集部

メディフォンは2014年1月のサービス開始以来、医療専門の遠隔通訳の事業者として業界をけん引してきました。厚生労働省、医療機関、消防などからのご利用で、現在の累計通訳実績は10万件を超えております。「多言語医療ジャーナルPORT(ポルト)」は、メディフォンがこれまでに培った知識・ノウハウをもとに、多言語医療に携わる方々のための情報を発信するメディアです。

監修者情報・友久 甲子

友久 甲子

メディフォンの遠隔医療通訳サービスや外国人患者受入れに関する研修事業の立ち上げを経験。外国人患者受入れに関する研修・セミナーの運営や講義を数多く担当し、医療機関の外国人患者受入れ体制整備コンサルティングや外国人患者受入れマニュアルの作成支援等にも数多くの実績を有する。令和元年度・令和2年度厚生労働省「外国人患者受入れ医療コーディネーター養成研修事業」研修カリキュラムテキスト作成担当・研修講師。令和4年度厚生労働省「医療費の不払い等の経歴がある訪日外国人の情報の管理等に関する仕組みの運用支援事業」有識者委員。