九州大学病院 × メディフォン株式会社 発信力と体制整備~九州大学病院IPAC国際化への軌跡~

2023年02月14日(火)

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2023年2月14日(火)14:00~15:50

目次
  1. Q&A

Q&A

※掲載にあたり、質問文を一部編集させていただいております。
当日や事後アンケートにて頂いた質問の内、セミナー中にご回答いただけなかった質問について九州大学病院様にご回答いただいた内容になります。

(外国人患者への診療の際は)口頭の説明だけではなく、例えばMRIの結果などの説明に対し、解剖図など呈示する、疾患の治療ガイドラインをご紹介するなど、口頭での説明以外をされていますか。

 通訳介入の際、念のため勉強のために描いている解剖図を持参し、場面によって呈示しご使用いただくことがあります。同意書やパンフレット等、事前に資料を使用することが分かっているときは翻訳版を持参するか、あるいはイントラネットから印刷のうえご使用いただきます。その他サイトラと、医師の話を紙に書き起こすボイトラを行うこともあります。

医療通訳者と協働するために医療職に必要な能力を高めるために、どのような人材育成をされていますか。

 現在のところ、院内の医療職を対象として、医療通訳者と協働するための能力向上を目的とした取組みは、特に行っておりません。医療通訳者を含め、院内で利用できる通訳ツールの紹介・使い分けの周知、語学研修の開催にとどまっているのが現状です。
 しかし、年々医療通訳者を活用した患者対応が増加する中、今後は、そうした取組みの必要性についても検討したいと思います。

通訳を介することで生じる一定のリスク(誤訳誤認など)について、患者様に通訳前に説明されますか。

 本院では、外国籍の患者さん全員を対象として、初診受付時に「九州大学病院の受診に関する説明書・同意書」という文書をご準備し、ご理解いただいたうえで受診いただいております。
 この文書は、患者さんが文化・習慣や制度が異なる国や地域から来日された場合であっても、受診にあたり事前にご理解いただきたい基本的な内容をまとめているもので、費用や紹介制度、個人情報の取扱い等について説明しております。通訳を介することで生じるリスクや、(医療通訳者ではなく)友人や家族による通訳を利用することで生じうるリスクについても、合わせてこちらで説明しております。

通訳の際に、治療内容や手技についてイメージしながら通訳されているとのお話でしたが、なかなか全ての診療科に対応するのは難しいと思っております。様々な診療科の通訳を行う際に、どの様に対応していますか。

・診察の場面で知らない疾患に出会った場合も、知っている単語で説明するようにしています。上下左右五感等人間の構造や感覚は世界共通であるため、通じない言葉はない、と自信をもつことも大事です。(例:坐骨神経、坐骨神経痛→sciatic nerve, sciatica この単語を知らない場合→ischium nerve, neuralgia of the ischium, などで乗り切る、次改善できればOK。)
・通訳だけに留まる話ではありませんが、常に問題意識をもち行動し、いざというときに対応できる策を準備しておくこと、次に類似した問題が浮上したときに対応できるかどうかが大切です。
・事前にカルテを見る時間があれば、その疾患について調べるようにしています。
・ある程度の疾患については検査や治療方法について事前に疾患別ファイルを作成し、一度でも関わった疾患については個人情報を伏せて個別ケースファイルを作成しています。
・九大の治療や手術に関する同意書やパンフレット、その他文書の全てを翻訳しているため、その点では疾患について学ぶ機会が多く、恵まれていると感じます。
・英語通訳の良いところは、医師も英語を話せることが多いため、専門用語を教えてくれたり直接患者に説明してくれたり、様々な場面で助けてくれることが挙げられます。日ごろからチームの一員であるという認識のもと協力体制を敷いておくことが大切と考えます。
・医療知識向上のため、個人的に診療情報管理士の通信教育を受講中です(現在1年目の医療知識を終了し、2年目のICD10を受講しているところ)。
・研修で得た良い取り組みは真似する、取り入れるようにしています。

英語を母語としない患者さんへの通訳で英語通訳者の方が対応する際に、コミュニケーションに困ることはありますか。
また、英語通訳者さんが対応する場合と通訳タブレットを利用して母国語で対応する場合でのメリットとデメリットを教えていただけますでしょうか。

訛りや理解力には差があるため、あまりにも通じ合ってないと判断した時は通訳タブレットを利用した母語での対応に切り替えるようにしています。ただ、言葉の問題だけでない場合もあるため、シンプルな英語表現、ジェスチャー、筆談等駆使して何が不足しているのか様子をみることも必要です。

<英語での会話(通訳)のメリット>
・患者が第2言語で英語ができる場合、英語での会話(通訳)が望ましい。医師の多くは英語リスニング能力が高く、通訳者により会話が正確に通訳されているか判断可能であるため、担保が2倍になり誤訳リスクが少ない。(母語の場合、正しく通訳されているか判断が難しく特にマイナー言語は通訳者が日本人でない場合が多いため、医療者の明瞭な話し方、協力体制が必要となる。)
<対面のメリット>
・適切なターンテイキング、スムーズな一人称通訳が可能。
・複数同席の診察(家族)において、誰が何を話しているかの認識が容易。
・その他患者の声が小さい時、医療者が絵や画像を示しながら説明する時、ベッドサイド、手術室、検査、等、周囲の環境が複雑で変化する場合は対面の方が有効。
・医師のジェスチャーを確認でき、通訳自身もジェスチャーを活用できる。

<母語での会話(通訳)のメリット>
・患者が自分の訴えをよりストレートに表現でき、患者の安心感につながる。
<タブレットのメリット>
・英語が話せない患者には、タブレットは必須。
・感染症の疑いがある場合。
・機械翻訳、遠隔医療通訳を場面によって使い分けることができる。
・ログが残るため、クレーム後の根拠となる。
・プライバシーをより重視する患者にとっては、対面よりもビデオをオンにしないタブレットの使用が望ましく、そういった対応も可能。
・海外にいる家族に電話する時、インターネット電話を通じて三者通話が可能なため、かなり有用。

医療や介護についての知識はあるのですが、英語のスキルが準2級レベルしかありません。医療通訳や外国人診療などの仕事をするには、どのような学習および過程を踏むといいのでしょうか。

まず準1級程度の実力をつけることが大切と考えます。例えば準1級のテキスト、1冊で良いので何度も繰り返し勉強し語彙力、リスニング/スピーキングスキルをつけてください(発音も全て調べる)。

<リスニングスキルをあげるコツ>
①耳だけのリスニング
②テキストを目で見ながらリスニング
③テキストを精読し、未知単語の意味と発音を全て調べる
⑤テキストを目で見ながらリスニング
⑥シャドーイング
⑦耳だけのリスニング
すーっと理解できるようになるまでこれを続ける。

<スピーキングスキルをあげるコツ>
・シャドーイング
・発音が難しい単語はひたすらリピート
・自分が発した言葉を耳から聞く、このフィードバックで言語能力が向上するため、声に出して読むことが大事。

<その他>
・好きな外国映画のサブタイトルを英語にし、共に発話。同じ映画を繰り返す。
・好きな本を読む。1日1頁と決めて必ず意味、発音全て調べる。300頁であれば1年経たず読み終わる。次第に未知単語が減り読むペースがあがれば頁数を増やす。
・医療用語は厚労省のカリキュラムを丸暗記し、徐々に増やしていく。

留学生への対応ケースで、主治医が帰国しての治療が妥当と判断するまでどれくらいの期間がかかりましたか。

病棟で主治医、精神科医師、看護師、ソーシャルワーカー、医療通訳者をメンバーとするカンファを数回経て、主治医が帰国しての治療が望ましいと判断を下したのは、救急搬送されてから4日目です。

セミナー概要

タイトル
九州大学病院 × メディフォン株式会社 発信力と体制整備~九州大学病院IPAC国際化への軌跡~
開催日時
2023年02月14日(火)