外国人患者が多い病院|受入れ体制のある病院の一覧や特徴を解説
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2023.09.08
外国人患者
日本にいる外国人の数が増加していることから、外国人患者さんを受け入れる医療機関も増えていくでしょう。
本記事では、外国人患者さんを多く受入れている医療機関は、どのような取り組みをおこなっているか解説していきます。
日本全体での外国人患者の受入れ状況
日本にいる外国人数の増加などから、外国人患者さんを受け入れる医療機関の数も増えています。まず、外国人患者受入れの現状や、受入れが多い医療機関では何人程度の外国人患者さんを受け入れているのか解説します。
日本にいる外国人の数は増加中
株式会社JTBが2023年1月に発表した、旅行動向見通しによると、2023年の訪日外国人旅行者数は2,110万人に達すると予想されています。10年前の2013年は約1,000万人であったことを踏まえると、この10年で少なくとも約2倍になっていると言えるでしょう。
また、在留外国人の数は2012年から2019年まで右肩上がりに増加し、コロナ禍で一度落ち込みましたが、2023年3月24日の出入国在留管理庁の報道によれば2022年末には初めて300万人を突破し、過去最高を記録しました。
訪日・在留外国人の双方が増加する傾向にあるため、病院に来院する外国人の数も増えてくると予想されています。
外国人患者を受け入れている医療機関は約半数?
厚生労働省の「医療機関における外国人患者受入れに係る実態調査」によれば、2021年9月の1か月間で、調査に回答した医療機関のうち約半数にあたる2,575の医療機関が外国人患者を受入れたことがあると回答しています。
外国人患者の来院が多い医療機関では月間1000人以上のところも
以下は、2021年9月の1か月間で、医療機関ごとに何人の外国人患者を受け入れたかを集計した結果です。
上記のグラフを見ると、1か月の受入れ人数が10人以下の医療機関が最も多いですが、10人より多い医療機関も約半数あります。つまり、少なくとも2-3日に1回は外国人患者が来院する医療機関が半数という結果で、外国人患者さんの受入れは日本の医療機関にとっても珍しいことではなくなっている様子がうかがえます。
2021年は新型コロナウイルス感染症の流行の影響もあり、訪日外国人の数が少なかったことを踏まえると、2023年以降は上記調査より多くの医療機関で外国人患者を受入れることになるでしょう。
外国人患者受入れ体制を整えている医療機関のリスト
厚生労働省では、外国人患者を受け入れる医療機関の情報を取りまとめたリストを公開しています。本リストについてご紹介します。
外国人患者を受け入れる拠点的な医療機関
「外国人患者を受け入れる医療機関の情報を取りまとめたリスト」は、外国人患者さんの利便性を高め、医療機関等及び行政のサービス向上を図ることを目的として、厚生労働省が公開している医療機関のリストです。
リスト内には、「外国人患者を受け入れる拠点的な医療機関」(以下拠点的な医療機関)も掲載されています。拠点的な医療機関は、厚生労働省と官公庁の依頼の結果、各都道府県が中心として選出されました。
そのため、以下に紹介する外国人患者受入れに関する認証を自ら申請して、難しい審査を経て取得した医療機関に比べると、受入れ体制の整備度合いにはばらつきがあるでしょう。しかし、各都道府県からかならず必ず選出されているため、網羅性があります。近くで外国人患者さんを受入れている医療機関がわからない場合などに活用できるでしょう。
拠点的な医療機関の一覧は厚生労働省|外国人患者を受け入れる医療機関の情報を取りまとめたリストからご覧になれます。また、外国人患者さん向けには、観光庁の日本を安心して旅していただくために―具合が悪くなったときに役立つガイドで情報が発信されています。
JMIPを取得した病院
「外国人患者受入れ医療機関認証制度(以下JMIP)」は、多言語による診療案内や、異文化・宗教に配慮した対応など、外国人患者さんが安心・安全に日本の医療サービスを受けられる体制を整えている医療機関を認証する制度です。JMIPは、厚生労働省が平成23年度に実施した「外国人患者受入れ医療機関認証制度整備のための支援事業」により創設されました。
JMIPを取得している医療機関のリストは、一般財団法人 日本医療教育財団|外国人患者医療機関認証制度|認証医療機関検索から確認できます。
JMIPの取得のメリットや評価制度などについては、以下の記事で解説しております。ぜひご活用ください。
>>>「JMIPとは|制度概要や取得する3つのメリットを解説!」
JIHを取得した病院
医療ツーリズムで来日する外国人患者さんの受入れに意欲的、且つ外国人患者受入れ体制を整備している医療機関を認証し、海外に発信することを目的として、一般社団法人Medical Excellence Japanが実施しているのが「ジャパンインターナショナルホスピタルズ(以下JIH)」です。
JIHを取得している医療機関のリストは、一般社団法人Medical Excellence Japan|Japan International Hospitals (JIH)から確認できます。
外国人患者さんが多い病院の受入れのための取り組み5つ
外国人患者さんが多い病院は、どのような受入れ体制を敷いているのでしょうか。外国人患者さんの受入れのための取り組みを5つ取り上げて解説していきます。
1. 医療通訳の導入
外国人患者受入れ体制整備において、最も重要なもののひとつは医療通訳の導入です。
医療通訳は、医療に特化した通訳者が文化・言語の異なる医療従事者と外国人患者さんの間に入り、コミュニケーションを円滑にします。
厚生労働省の作成した「外国人患者の受入れのための医療機関マニュアル」では、訴訟の発生リスクなども鑑み、医療機関での通訳体制の構築について、単に利便性やサービスの問題ではなく、医療安全対策の一環として検討すべきとしています。
外国人患者さんをよく受入れている医療機関の多くは医療通訳を利用できるようにしています。
以下は医療通訳について網羅的に解説した記事になります。ぜひご活用ください。
>>>「医療通訳とは?|種類・活用事例・利用方法をまとめて解説」
2. 院内資料・院内表示の多言語化
院内資料や院内表示の多言語化も重要な受入れ体制整備の一つです。問診表などよく使う資料は翻訳しておくと、通訳者に訳してもらう手間を省くことができます。手術の際の同意書など、法的に重要な位置づけの資料に関しては、患者さんが理解できる言語が求められるでしょう。会話であれば日本語でコミュニケーションできる方も、文字の読み書きは難しい場合があるため、資料の多言語化は重要なのです。
また、院内表示については、すべてを多言語化することは難しいため、優先順位をつけて対応するのが一般的です。外国人患者さんが来院した際に必ず見るような、各フロアの案内図や、各窓口や患者さんの安全に関わる災害時の案内や立入禁止区域や危険区域の表示などから多言語化していきます。
3. 外国人対応専門の部署の創設
外国人患者さんの来院数が多い医療機関では、国際診療部、国際支援部等という名前の外国人対応専門の部署が創設されることもあります。
こうした部署の中の通訳者が通訳をおこなうケースもありますが、基本的に外国人対応専門の部署の主な業務は、院内調整や外部との連携です。具体的には、医療通訳を手配したり、院内に外国人対応のノウハウを共有したり、複数の部署が関わる場合の連携をまとめる、などの業務があります。
外国人対応をおこなう専門の部署を創設すれば、外国人対応に携わるスタッフの業務負担を減らすだけではなく、外国人対応に関する情報・ノウハウをその部署に蓄積できます。
4. 外国人患者受入れに関する認証の取得
さらに外国人患者受入れ体制を整えている医療機関は、先ほど解説したような、JMIPやJIHといった外国人患者受入れに関する認証を取得しています。
認証の取得により、外国人患者受入れ体制への院内の意識・関心を高め、体制整備の推進力を高めることができます。
JMIPの概要や取得のメリットについては以下の記事で解説しています。ぜひご活用ください。
>>>「JMIPとは|制度概要や取得する3つのメリットを解説!」
5. 医療費の設定
日本の公的保険証を持たない訪日外国人患者さんは、自由診療となるため、医療費を医療機関が自由に設定できます。以下のグラフは、訪日外国人に対する医療費について、各医療機関が診療報酬点数1点当たり何円で請求しているのかを表したグラフです。
以上のグラフを見ると、外国人患者さんを受入れる拠点的な医療機関やJMIP/JIH認証医療機関、つまり、外国人患者さんの受入れが多いと考えられる医療機関では、訪日外国人患者さんの医療費を高く設定する傾向にあるとわかります。
外国人患者受入れ体制の整備にはお金もかかるため、医療費を高くしていると考えられます。
外国人患者さんの医療費については以下の記事で解説しております。ぜひご活用ください。
外国人患者さんの来院数を把握し、来院数に応じて適切な対応を
外国人患者さんの来院が多い病院は、医療通訳を導入するなどの受入れ体制を整えていたり、JMIPやJIHといった認証を取得しています。また、自由診療となる訪日外国人の診療費を高く設定しています。こうした体制の整備は、外国人患者さんの来院数やどの言語を母語としている患者が多いのかなどの現状を把握することで、適切に進められるでしょう。
これから外国人が増加し、医療機関に来院する外国人の数も増えてくると想定されています。まだ外国人患者さんの来院数を計測されていない場合は、診療申し込み書に国籍欄や言語欄を設けて記入してもらう、英語や、やさしい日本語の診療申込書を準備して、それらを利用した人の数を数えるなど、まずは概数でも良いので来院数を把握するための仕組みを取り入れることから始めるのをお勧めします。
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