外国人が出産した子どもの国籍は?|現状の制度を解説

  • 2024.08.20

    外国人患者の出産

外国人が日本で出産した子どもの国籍はどのように規定されているのでしょうか?
本記事では、現在の日本の法制度と、日本で生まれる外国人を親に持つ子どもの状況を解説していきます。

外国人の子どもの国籍に関する制度について

まず、出生した子どもの国籍に関する制度について、諸外国及び日本の現状を解説いたします。

血統主義・出生地主義

赤ちゃんの国籍の考え方には、大きく分けて血統主義と出生地主義の2種類の考え方があります。

血統主義とは、親の国籍を子どもが受け継ぐという考え方のもと、親が国籍を有していれば子どもも同じ国籍を有することができる制度です。血統主義の中にも、父親の国籍を条件とする場合、どちらか一方の国籍を条件とする場合、両方の国籍を条件とする場合の3種類があります。

一方、出生地主義とは、生まれた場所を参照して国籍が付与されることです。アメリカ合衆国やカナダではこの出生地主義が採用されています。

また、フランスやドイツのように血統主義と出生地主義を両方採用しているところもあります。たとえばフランスでは、父母のどちらかがフランス国籍であれば子どもはフランス国籍を取得できますが、両親がフランス国籍ではない場合でもある条件を満たせば国籍を取得できます。その条件とはフランスで生まれて11歳から5年以上居住していることであり、その場合18歳になったときに自動的にフランス国籍が取得できます。

日本で生まれた子どもの国籍は親の国籍による

日本では血統主義が採用されており、父母のいずれかが日本国籍であれば、海外で生まれたとしても日本国籍を取得できます。
国籍法第2条では以下のように定められています。

第二条 子は、次の場合には、日本国民とする。
一 出生の時に父または母が日本国民であるとき。
二 出生前に死亡した父が死亡したときに日本国民であったとき。
三 日本で生まれた場合において、父母がともに知れないとき、又は国籍を有しないとき。
引用:法務省|国籍法

父母が行方不明であったり無国籍の場合は、日本も出生地主義を採用し、日本国籍を付与する制度になっています。

もともと日本は明治時代から父親が日本国籍ではない限り日本国籍を取得できない、父系優先血統主義でした。その後、国際的な男女平等の流れもあって1984年に法律が改正され、現在の父母どちらかが日本国籍であれば子どもは日本国籍を取得できるという制度に変わったのです。

出産時の婚姻関係の有無に注意

子どもが日本国籍を取得できる条件は、父母どちらかが日本国民であることですが、婚姻の成立有無や成立時期についても条件があります。

母親が日本人の場合は出生届を提出することで子どもは日本国籍を取得できます。しかし、婚姻届提出前に、外国人の母と日本人の父との間に生まれた子どもは、出生届の提出だけでは日本国籍を取得できません。国籍取得のための手続きをおこなう必要があります。


また、婚姻届を提出したが、正式に婚姻が成立していない可能性もあります。結婚相手の国との関係性から法務局で婚姻届けを受理してよいのか審査がおこなわれる場合があるからです。この場合、婚姻届を提出していても正式には婚姻関係が結ばれていない状態となり、その期間に生まれた子どもは日本国籍を取得できません。

【補足】二重国籍について

日本では、二重国籍を原則認めておらず、生まれながらにして2つの国籍を所有する人は、20歳までに国籍を選択する必要があります。なお、子どもが海外で生まれた場合は、国籍留保届を現地の在外公館に3か月以内に提出する必要があります。日本で生まれた場合は、出生届の提出のみで日本国籍を取得できます。

外国人の子どもの国籍の現状

外国人を親に持つ子どもがどれくらいの割合でいるのかについてデータをもとに解説いたします。

親の一方または両方が外国籍である子どもの割合は4%以上

以下の表は、両親の国籍について、父母がどちらも日本人の場合・父母のどちらかが外国人の場合・父母の両方が外国人の場合の3つの場合における子どもの人数と割合を示したものです。

父母が日本人父母の一方が外国人父母の両方が外国人
実数795,39716,22518,435
割合95.8%4.2%
参考:厚生労働省|日本における外国人の人口動態 2021 厚生労働省|人口動態調査_父母の国籍別に見た年次別出生率及び百分率 2021

以上の表より、親の一方または両方が外国籍である子どもの割合は全体の4.2%にのぼることが分かります。
現在日本に住む外国人の数は増加しており、この数は今後も増加していくと予想されています。

両親が外国人の子ども|国籍が多様化

次に、両親が外国人の場合の国籍の内訳についてご紹介いたします。
以下は、2012年から2022年までの、日本で外国籍の両親の間に生まれた子どもの数について、母親の国籍ごとに表したグラフです。

参考:厚生労働省|人口動態調査_日本における外国人の人口動態 2012~2022年

以上のグラフを見ると、全体的な割合に変化はありませんが、「その他」が大幅に増加しており、全体の半分近くを占めていることが分かります。
母親の国籍が多様化しており、日本で生まれる外国籍の子どもの国籍も多様化していると推測できます。これまでは、英語・中国語・タガログ語(フィリピン)・ポルトガル語(ブラジル)といった、日本に昔から在留者が多い言語への対応で十分だった地域でも、今後は対応すべき言語が広がっていくことが予想されます。

片親が外国人の子どもの数は減少中

親の一方が外国人の子どもの数は減少傾向にあります。以下のグラフは、父母のどちらかが外国人の子どもの出生数の推移を表したグラフです。

参考:人口動態調査 父母の国籍別にみた年次別出生数 2012~2021年

以上のグラフを見ると、父親が日本人の場合、母親が日本人の場合、双方において子どもの数が減少傾向にあることがわかります。

医療機関にできる外国人の出産受入れのための取り組み

外国人を親に持つ子どもの出生数は、特に両親が外国人のケースで増えていくと想定されます。医療機関で外国人の出産を受入れる際、どのような取り組みをしていけば良いのかについて参考となる記事をご紹介します。

まず出産文化の違いを踏まえて患者さんから要望を聞き取り、対応できる範囲とできない範囲を説明することが重要でしょう。妊娠・出産という人生における大きなイベントは、各国の文化・風習の特徴が色濃く反映されます。たとえば中国では、妊婦さんは産後1か月ほどの間は、家を出ない、シャワーを浴びない等の文化があり、それが当たり前だと思っている人もいます。
そうした異なる文化を事前に知っておくことで、トラブルを未然に防ぎ、円滑な対応が可能になるでしょう。

以下の記事で出産に関する各国の文化を解説しております。ぜひご活用ください。


また、出産や育児に関する医療制度も、日本と海外で異なる部分が大きいために外国人が戸惑いやすいことの一つです。医療機関においては、以下のブログ記事で解説しているような、ツールなどを外国人の妊婦さんに紹介するのも良いでしょう。

出産に限らず、外国人の患者さん全般の受入れ体制整備については以下の記事で解説しております。ぜひご活用ください。

多様な国籍に対応できるように準備をすることが重要

本記事では、外国人が出産した子どもの国籍についての現状の制度や、日本で外国人を親に持って生まれる子どもの数について解説してきました。
日本に住み、働く外国人の数が増えていく中で、日本で出産する外国人も増えて来ています。言語や文化が全く異なる国で出産・育児をすることは大きな困難を伴う可能性が高く、周囲の支援が重要になります。

医療機関においては、安全かつ円滑な対応のためにも、医療通訳を導入することや、外国の文化について知り、事前にトラブルを回避することが重要です。
本記事で両親を外国人に持つ子どもの国籍が多様化していると予測できることを紹介しましたが、これからは英語・中国語・ポルトガル語以外の言語を母語とする人が増えていきます。そのため、様々な言語に対応できる言語ツール、たとえば遠隔医療通訳が重要となります。

遠隔医療通訳とは電話回線・インターネット回線を利用し、遠隔で通訳者によっておこなう通訳のことです。遠隔医療通訳では通訳者の居場所が問われないため、通訳者数の少ない言語においても対応できる可能性が高まります。


医療通訳対応10万件以上の実績をもち、全国約88,000の医療機関でご利用いただける、医療に特化した多言語通訳・機械翻訳サービス「mediPhone(メディフォン)」のサービス資料は以下からダウンロードできますので、ぜひご活用ください


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著者情報

多言語医療ジャーナルPORT(ポルト)編集部

メディフォンは2014年1月のサービス開始以来、医療専門の遠隔通訳の事業者として業界をけん引してきました。厚生労働省、医療機関、消防などからのご利用で、現在の累計通訳実績は10万件を超えております。「多言語医療ジャーナルPORT(ポルト)」は、メディフォンがこれまでに培った知識・ノウハウをもとに、多言語医療に携わる方々のための情報を発信するメディアです。