電話医療通訳とは?メリットと運用のコツを分かりやすく解説!

  • 2023.07.11

    医療通訳

アイキャッチ「医療通訳 電話」

電話医療通訳は、訪日外国人の増加や新型コロナウイルス感染症の拡大を背景に、急激に普及しました。それは、電話医療通訳の利用にさまざまなメリットがあるからです。

一方で、新しい仕組みであるがゆえに「導入や運用が難しそう」と思われる方も少なくありません。本記事では、電話医療通訳のメリットと導入・運用のポイントについて解説します。

電話医療通訳とは

電話医療通訳は、電話回線かインターネット回線を用いた遠隔通訳です。

医療通訳は長らく対面での通訳が基本でした。しかし、訪日外国人数の急増などによる医療通訳需要の高まりから、希少言語や急な通訳需要への対応が難しいという対面通訳の弱点が顕在化しました。さらに、新型コロナウイルス感染症の流行により、対面の通訳は感染症対策の観点から難しいケースが増えました。

そこで期待を集めたのが、電話医療通訳を含む遠隔医療通訳です。

実際、厚生労働省が実施した「令和3年度 医療機関における外国人患者の受入れに係る実態調査」によると、70%以上の第二次医療圏において、電話医療通訳を導入している病院があります。2018年の調査から20%以上伸びており、その広がりがわかります。

【補足】二次医療圏とは

医療圏とは、医療法によって定められた病床整備のための単位で、一次から三次まであります。一次医療圏は、診療所などの外来を中心とした日常的な医療を提供する地域区分です。

二次医療圏は、一般に入院に関わる医療を提供できる単位で、保健所は二次医療圏に基づいて設置されます。三次医療圏は、高度で最先端の医療を提供する単位で、基本的に都道府県ごとに1つです。

詳しくは、医療計画 |厚生労働省をご覧ください。

電話医療通訳のメリット

電話医療通訳のメリットは主に以下の3つにまとめられます。

1. 場所や時間を問わない・電話回線やインターネット回線があれば、いつどのような場所でも医療通訳の依頼が可能
・特に救急の患者など、急な来訪の対応の際や通訳者が少ない地方での利用等に便利
2. コスト削減交通費や宿泊費がかからず通訳者の待ち時間などもないため通訳者の拘束時間を短くでき、派遣通訳より費用を抑えやすい
3. 質の高い通訳者を選べる電話通訳では、距離に関係なく通訳者に依頼できるため、全国・全世界から質の高い通訳者を選びやすい


厚生労働省の「外国人患者受入れのための医療機関向けマニュアル」では、診察や手術の説明など医療用語が出てくることが想定される場面では、医療通訳者としての教育を受けていない、患者さんの友人や家族・会社の同僚・院内のバイリンガル職員による通訳、機械翻訳の利用は推奨していません。誤訳発生のリスクなどが高まり、医療安全上問題があるからです。

しかし、専門の医療通訳者の手配には時間やお金がかかるほか、英語や中国語以外の希少言語の場合は、その言語の通訳者が見つからない可能性があります。そうした場合に、いつでもどこでも使用できる電話通訳は大変有効です。

しかし、中には電話通訳の利用方法が難しいのではと思われる人もいるかもしれません。そこで電話通訳の運用のコツについて解説していきます。

電話通訳を便利に使用するためのポイント

電話通訳を便利に利用するための、主なポイントを6つご紹介します。中には、電話通訳だけではなく、医療通訳全般に当てはまることも含まれています。

また、一般的なポイントを紹介していますので、以下を参考にしつつもそれぞれの状況に合わせて電話通訳の整備を進めていくとよいでしょう。

1. 通訳サービスを決める

医療機関が遠隔医療通訳サービスを利用する場合、もっとも一般的なのは民間事業者の電話医療通訳サービスです。

その他の選択肢として、厚生労働省が運用する「希少言語に対応した遠隔通訳サービス」や自治体運用の電話医療通訳サービス、医師賠償責任保険に付帯した医療通訳サービス(例:東京海上日動火災保険株式会社「医師賠償責任保険医療通訳サービス」)など、無料や低額で使えるサービスもあります。

サービスを選ぶ際には、まず、過去の外国人患者さんの来院状況や地域の状況を確認します。具体的には、どのような言語を話す外国人住民・観光客が多いのか、どのような傷病での来院が多いのかなどを把握するとよいでしょう。次に、自院で必要な言語・時間帯・回数・サービスレベルを確認します。最後に、サービスが対応してくれる場面の難易度や応答率、誤訳時の対応等について調査します。

以上のようにしてサービスを決めると良いでしょう。

医療通訳サービスを比較検討する際のポイントや費用については以下の記事をご活用ください。


>>>「医療通訳にかかる費用とは?相場や費用節約のコツを解説!」

医療通訳にかかる費用についての解説記事

2. 機器などの環境整備をおこなう

電話医療通訳では、電話回線かインターネット回線を用いておこないます。電話回線を利用する場合は、外線につながる電話であればどれでも使えます。通信が安定しているため、大きな準備は必要ありません。

一方で、タブレット端末等を利用してインターネット回線で電話やビデオをつなげる場合には、院内の通信状況を確認する必要があります。同じ病院内でも、つながる場所とつながらない場所があることが多いので、利用が想定される場所で安定した通信ができるかを把握することは重要です。通訳の最中に突然切れることがないように、テストコールをするなど回線状況を確認しましょう。

【コラム】電話医療通訳の種類

電話医療通訳の運用のコツに触れる前に、3者間通話について理解しておくとよいでしょう。電話医療通訳に限らず遠隔通訳には、2者間通話と3者間通話の2種類があります。以下は2者間通話と3者間通話の違いを表した画像です。


2者間通話は、関係者の所在地が現地と通訳者の2地点の場合で、3者間通話場合は3者がお互いに離れた場所にいる場合に利用します。3者間通訳を希望する場合は、使用するサービスやシステムが対応しているのか確認しましょう。

3者間通訳は、外国人患者さんが家に帰った後に服薬の仕方など伝えたいことがある場合や、外国人患者さんの家族が遠方に住んでおり、家族へ手術の説明などが必要な際に役立ちます。利用状況に合わせて2つの通訳を使い分けるとよいでしょう。

なお、電話通訳サービスによっては3者間通話が使えないケースもあります。電話通訳サービスについて検討されている場合、院内での使用場面の想定によっては、3者間通話が可能か確認すると良いでしょう。

3.  場面ごとの使用ルール・フローを決める

使用する場面によって誰がどのような医療通訳を用いるのかは、医療機関によって異なるでしょう。例えば、院内で英語の通訳者がいる場合、英語以外の言語の通訳が必要な場合のみ電話通訳を使うというルールを設けるという方法もあります。

また、簡単な診察の場面ではコストの低い電話通訳を使って、手術の説明と同意を得るための場などではビデオ通訳や派遣通訳を使うというルールを設けるのも良いでしょう。ルールを決めていないことで対応にあたるスタッフが困ってしまうこともあるため、あらかじめ誰がどのような場面でどの通訳をどのようなフローで利用するのか決めておくと、円滑な対応が可能になります。

また、スマートフォンやタブレットなどのデバイスを用いる場合は、デバイスの管理方法についてもルールを決めると良いでしょう。急な外国人患者さんの来院があって通訳を使いたいが端末が返却されておらずどこにあるかわからない、充電ができておらず使用できない、というトラブルが起こる可能性があります。

4. 院内に周知する

通訳サービスの導入が完了し、環境整備や使用ルールを策定したら、十分な院内周知の実施が大切です。

・病院の外国人患者対応のマニュアルに利用できる医療通訳サービスや利用方法を整理して記載する
・円滑に利用するコツについてわかりやすいマニュアルを作成する
・院内で使い方説明会を開催する

など、周知のための取り組みをおこなうとよいでしょう。

また、通訳や多言語資料を利用しないことで引き起こされるリスクについて、正しく理解してもらうことも重要です。院内のキーマンや外部講師等をうまく活用しながら、医療機関やスタッフ自身を守るためのツールであることを強調して、利用を促進しましょう。なお、院内周知をサポートをおこなう通訳事業者もありますので、問い合わせると良いでしょう。

医療安全の観点から医療通訳について解説した記事は以下になります。もしよろしければご活用ください。


>>>「医療通訳の今後とは?従来からの課題と最近の取り組みを解説!」

5. 通訳を使用した際のコミュニケーションのコツ

対面通訳の場合は、通訳者は医療機関の方や外国人患者さんと同じ空間にいて、言語情報だけではなく、身振り手振りや表情などの非言語情報に基づいて通訳をおこないます。

しかし、電話通訳の場合は、通訳者は音声情報しか得られず、言語情報のみで通訳をおこないます。そのため、通訳を利用する際の勝手が対面通訳とは少し異なります。

そこで、電話通訳をより円滑に利用するコツを紹介します。なお、通訳の際のコミュニケーションのコツは様々あり、ここではその一部を紹介します。

通訳開始時

電話通訳の多くの場合では、通訳者は事前にどのような状況での通訳依頼なのか把握していません。通訳者とつながる際、まず通訳を利用する状況(場所、診察科・部署)と目的を伝えると円滑な通訳利用につながります。

例えば、「初診受付で選定療養費について説明したい」「内科の診察室で症状の詳細について聞きたい」などと伝えるとよいでしょう。

また、電話通訳では受話器を受け渡しながらおこなう方法と、ハンズフリー通話(スピーカー機能)を使用する方法があります。両者によって通訳者が通訳内容を話し出すタイミングが異なるため、どちらの方法を利用するかを最初に伝えるとよいでしょう。

通訳中

医療通訳は基本的に逐次通訳になります。逐次通訳とは、同時通訳とは異なり、発話が終わってから通訳者がまとめて訳す方法です。通訳者が十分な能力をもっていたとしても、医療者が早口で話す・難解な専門用語を羅列するなどすると通訳が困難になり、誤訳の一因になってしまいます。

医療者と医療通訳者は、外国人患者さんへの安心・安全な医療の提供のためにともに協力し合うチームであることを意識して、通訳者が通訳しやすいように以下のような点を意識して話すとよいでしょう。

・はっきり、早口にならないように話す
・ 一度に長く話しすぎないようにする
・専門用語や略語はできるだけ避け、一般の人にも理解しやすい平易な言葉を使う
・主語や語尾の省略、曖昧な表現を避け、何を伝えたい(聞きたい)のかが明確な文章で話す

また、受話器を受け渡しながら電話通訳をおこなう場合、通訳者は通訳内容を話し出すタイミングの把握に苦労します。そのため、受話器を受け取った際に「代わりました」などと言うと円滑に通訳を進められるでしょう。

こうした通訳使用中のポイントについての理解を深めることで、より円滑に電話医療通訳を使用できるでしょう。

6. 定期的な評価の実施

電話通訳が適切に利用できているかを職員にアンケート調査することや、通訳の利用履歴を確認することも重要です。通訳事業者によっては通訳履歴を確認できます。導入して終わりにしてしまうと利用が促進されず、せっかく導入したにも関わらず利用されないので契約を終了せざるを得ない、というケースも考えられます。

導入後の利用状況を把握し、あまり利用されていない場合はその理由を特定して、利用促進のための施策をおこなうといいかもしれません。どういった利用促進方法があるかは、電話医療通訳の事業者が知見・ノウハウを有していたり、協力してくれるケースもあるので、問い合わせてみてもいいでしょう。

電話医療通訳の活用で、外国人患者さんに対しても安全で円滑な医療提供を!

電話医療通訳は、急な外国人患者さんの来院や、院内の通訳者では対応していない希少言語話者の患者さんが来院した際などでも対応可能な点が特徴です。電話通訳は導入や利用のハードルが高いように感じられる方もいるかもしれませんが、ポイントを押さえれば手軽に利用できます。

電話医療通訳を導入する最大の利点は、コミュニケーション不全によって引き起こされる医療安全上のリスクを大幅に低減できることです。また、コミュニケーションが円滑になることでトラブル防止や職員の負担軽減にもつながります。

言葉が通じる安心感を得ることで、スタッフが日本語を話さない患者さんに対しても日本語を話せる患者さんと同じように接することができるようになり、安全で円滑な医療提供につながっていくでしょう。





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著者情報

多言語医療ジャーナルPORT(ポルト)編集部

メディフォンは2014年1月のサービス開始以来、医療専門の遠隔通訳の事業者として業界をけん引してきました。厚生労働省、医療機関、消防などからのご利用で、現在の累計通訳実績は10万件を超えております。「多言語医療ジャーナルPORT(ポルト)」は、メディフォンがこれまでに培った知識・ノウハウをもとに、多言語医療に携わる方々のための情報を発信するメディアです。

監修者情報・友久 甲子

友久 甲子

メディフォンの遠隔医療通訳サービスや外国人患者受入れに関する研修事業の立ち上げを経験。外国人患者受入れに関する研修・セミナーの運営や講義を数多く担当し、医療機関の外国人患者受入れ体制整備コンサルティングや外国人患者受入れマニュアルの作成支援等にも数多くの実績を有する。令和元年度・令和2年度厚生労働省「外国人患者受入れ医療コーディネーター養成研修事業」研修カリキュラムテキスト作成担当・研修講師。令和4年度厚生労働省「医療費の不払い等の経歴がある訪日外国人の情報の管理等に関する仕組みの運用支援事業」有識者委員。