外国人の出産|文化の違い・支援の取り組み・産後の手続きなどを解説
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2024.08.20
外国人患者の出産
日本に住んで働く在住外国人の増加に伴い、日本で出産する外国人も増えています。
産科における外国人患者さんの受入れを円滑にするためのポイントを網羅的に扱い、関連する記事をご紹介します。
日本で出産する母親の32人に1人が外国人
厚生労働省によれば、日本で生まれた子どものうち、外国人の母親を持つのは33,453人で、日本で出産する母親の32人に1人が外国人と言われています。
日本に住む外国人の数が増えているため、日本で出産する外国人の妊婦さんも増えています。特に、両親が外国人であるケースは増加傾向にあります。
外国人の出産の受入れで困る可能性があること3点
外国人の妊婦さんを受入れる場合、言語や文化などバックグラウンドが違うことが原因で、円滑に進まないケースもあります。出産に関する海外の文化や、言葉の違いの乗り越え方を知って対策を進めることができれば、受入れを円滑に進められるでしょう。
1. 言語の違い
外国人患者さんを受け入れる際に一番の障壁となるのは、言語の違いです。言葉が通じないということは外国人患者さんはもちろん医療者にとっても不安要素でしょう。
また、自分の話したことが正確に伝わっているか分からない状態でやりとりをするのは、お互いの想定通りに進まずにトラブルとなった場合、大きなリスクを抱えることにもなります。逆に言えば、言葉がお互いに通じるようになると、外国人患者さんの受入れはより安全かつ円滑に進めることができるでしょう。
2. 文化の違い
2つ目は文化の違いです。妊娠・出産に関する習慣・風習は伝統的な文化の影響を色濃く受けている傾向にあり、国によって大きな違いが出る分野です。
たとえば、中国では出産後1か月の期間を「坐月子(ズオユエズ)」と言い、入浴や冷たい飲み物を飲むこと、家を出ることなどが禁止されます。また韓国では、産後の母親は数十万円の費用を払って産後調理院という施設に入り、良い食事やマッサージなどのサービスを受け、心身の回復を図ることが通例となっています。他にも韓国ではミネラルが豊富という理由で、わかめスープを飲む習慣があると言われています。
日本と地理的に距離の近い中国や韓国でも、日本では中々見られない習慣が根付いています。外国人の妊婦さんを受入れる際は、要望などを聞き出し、対応できることとできないことを事前に明確にしておくとより円滑な受入れにつながるでしょう。
以下の記事で、海外と日本の出産に関する文化の違いについて詳しく解説しています。ぜひご活用ください。
3. 出産に関する制度の違い
出産や出産後の育児を支援する制度は様々な国で整備されていますが、国によってその内実は様々です。
日本では、母子健康手帳の交付や妊婦健診については、国籍や保険の有無に関わらず全ての人が受けることができます。また、入院助産制度や出産育児金についても、原則日本の公的保険に加入していれば受けることが可能です。
もし外国人の妊婦さんを受入れた際、日本の妊婦に対する支援制度について知らない場合は情報提供するとよいでしょう。
医療機関が外国人の出産の受け入れを円滑におこなうためにできる準備
産婦人科などにおいて、外国人の妊婦さんを受入れる際に重要なことは、言語・文化の違いへの対応の準備をおこなうことです。
医療通訳の導入
厚生労働省の「外国人患者受入れのための医療機関向けマニュアル」では、医療用語の使用が想定されるような専門性の高い場面や、個別性の高い場面において、医療通訳の利用を推奨しています。
妊娠・出産は、これまでに述べたように、日本と海外において文化・習慣の違いが大きくなりやすい分野です。また、個人の考え方、感じ方も人それぞれである傾向が強く、個別性の高い場面と言えます。そのため、医療通訳を用いることが望ましいでしょう。
翻訳機では複雑な文章を上手く訳出することが難しく、外国人患者さんは本音を伝えづらいと感じるでしょう。さらに、感情を読み取ることができないため、患者さんへのケアという点でも不足が生じる可能性があります。
また、知人・友人や職場の同僚が同行して通訳をするという場合もありますが、職場の同僚や知人・友人には、プライベートな事情を明かしづらいという患者さんは少なくありません。
医療通訳を用いることで、患者さんが安心して診療を受けることができ、医療機関としてもより安全かつ円滑に受入れをおこなうことができるでしょう。
医療機関の状況に合わせた医療通訳の導入のポイントについて解説した資料は以下のリンクからダウンロードいただけます。ぜひご活用ください。
>>>「医療通訳ガイド|自院に合わせた通訳体制整備のコツ」をダウンロードする(無料)
異なる文化への対応方法を定める
医療通訳を導入することで、言語の違いには対応できるでしょう。
次に、文化の違いについて、時期に応じてどのような点に注意するとよいのかポイントを解説します。
1. 妊娠中について
妊娠中ですが、まず母子健康手帳や妊婦健診の存在を知らない場合、日本の妊婦を支援する制度を説明すると良いでしょう。妊婦健診が一般的ではない国もありますし、また妊婦健診の回数が日本より少ないのが一般的な国もあります。
説明の際には、かながわ国際交流財団|外国人住民のための子育て支援サイトの中にある「外国人住民のための子育て支援チャート」が役立つでしょう。
また、最近では新型出産前検査(NIPT)をおこなう国も増えています。日本でも実施施設数が増えており、患者さんから希望される可能性があるでしょう。
2. 出産方法について
また、妊娠中において、出産方法について外国人妊婦さんの意向を聞き取るとよいでしょう。欧米では無痛分娩を選択する妊婦さんの数が半数以上という国も少なくありません。また、中国では帝王切開による出産が望まれる傾向にあります。
また、配偶者や家族の出産の立ち会いを望むかについても国や個人によって考え方が分かれる点です。
3. 産後について
産後の入院日数は国による違いが大きい点です。日本は世界的に見ても入院日数が長い国であり、場合によっては医療機関の想定より早い退院を望む患者さんがいるかもしれません。
また、産後の妊婦の過ごし方にも各国の特徴があります。中国や韓国では特徴があるため、事前に妊婦さんやその家族とコミュニケーションをとると良いでしょう。
文化の違いへの対応など、産科における外国人患者さんの受入れを円滑におこなうためのポイントをまとめた資料は以下のリンクからダウンロードいただけます。ぜひご活用ください。
>>>「産科における外国人患者受入れのポイント」をダウンロードする
【補足】外国人の妊婦さんに役立つ情報を知らせる
外国人の妊婦さんを受入れるにあたって、先述したかながわ国際交流財団|外国人住民のための子育チャートなど、外国人の妊婦さんが出産する際に参考となる資料などを教えることも有効です。
以下の記事では外国人の妊婦さんに役立つ情報が載っているサイトを紹介しています。ぜひご活用ください。
【補足】外国人を親に持つ子どもの国籍
外国人を親に持つ子どもは、両親とも外国籍であった場合は日本国籍をすぐに取得することは原則できません。片方の親が日本国籍であった場合、届け出を適切におこなうことによって日本国籍を取得することができます。
両親を外国人に持つ子どもは、日本国籍を取得できないため、基本的に日本に留まるためには在留資格を取得することが必要です。
以下の記事では、外国人を親に持つ子どもの国籍に関する制度や、現状日本で生まれる子供の国籍の割合について解説しております。ぜひご活用ください
【補足】外国人を親に持つ子どもの在留資格
外国人を両親に持つ子どもの在留資格は、両親がどのような在留資格を持っているかによって決定されます。基本的に、父または母が永住者の場合は「永住者」、就労資格や留学ビザの場合は「家族滞在」となります。
また、技能実習や特定活動は家族帯同が認められていないビザですが、人道上などの理由により「特定活動」のビザが取得できる可能性があります。
以下の記事で外国人を親に持つ子どもの在留資格の制度や申請方法を解説しております。ぜひご活用ください。
外国人の妊婦さんの出産の受入れに際して医療機関ができること
妊娠・出産に関する文化は国によって大きく異なることが多いため、外国人の妊婦さんの受入れでは文化の違いを理解し、対応の準備をすることが重要です。中国、韓国のように日本と文化的に近い国でも、日本とは全く異なる文化を持っています。
受入れの準備としては、まず医療通訳を導入し、言語の違いに対応できることが重要です。コミュニケーションが円滑に進まないことによって、診療に時間がかかったり、トラブルが発生するのを防ぐことができます。次に、文化の違いを知ることが重要です。文化の違いを知ることで、事前に患者さんとコミュニケーションを重ねて意向を確認し、トラブルを事前に防ぐことができるでしょう。
日本に住む若年層の外国人が増えるにつれ、日本で出産する外国人の数も増えていくと予測されます。医療機関においては、早めの対策をおこなうことが重要です。対応に困った経験がある方は、まずは医療通訳の導入を検討するとよいでしょう。
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