外国人の出産後|在留資格の申請などの必要な手続きや制度を解説
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2024.08.20
外国人患者の出産
両親がともに、あるいは、どちらかが外国籍の子どもが生まれた場合、出産後に必要な手続きが日本人の場合とは異なることがあります。本記事では、両親ともに外国人の子どもの在留資格や、在留資格の申請に必要な書類や手続きを解説します。
赤ちゃん24人のうち1人は親が外国人
日本において2021年に生まれた子どものうち、父母が両方とも日本人の子どもと、親が外国籍の子どもの数及び割合を以下の表に示しました。
以上の表から、父母の一方または両方が外国人の子どもの割合は4.2%であることが分かります。つまり24人に1人は親に外国人がいることになります。
日本においては、親が外国籍で子どもも外国籍であったとしても、母子手帳の交付や入院助産など、妊産婦に係る制度を利用することが可能です。母子保健法は、国籍や在留資格に関係なく、日本で妊娠しているすべての女性に適用されているからです。
子どもの国籍について
外国籍の親からの子どもが生まれた場合、国籍はどうなるのでしょうか。基本的に、親のどちらかが日本国籍であれば、日本国籍を取得することができます。そのため、出産後の手続きについても両親ともに日本国籍の場合と同じです(日本ではない方の国の国籍をとる場合は、その国での手続きが必要になります)。
しかし、両親とも外国籍の場合、その子どもは日本国籍を取得することができず、在留資格を取得する必要があります。
両親が外国人の場合の在留資格
両親が外国籍の子どもは、日本に60日を超えて滞在するためには在留資格を取得する必要があります。具体的には、出生した日から30日以内に、居住地を管轄する地方入国管理官署へ在留資格の取得を申請することが必要です。
「在留資格取得許可申請」に必要な書類は、申請する在留資格によって異なります。詳しくは、出入国在留管理庁のホームページ(在留資格一覧表 | 出入国在留管理庁)を確認するか、もしくは行政書士等の専門家に相談するとよいでしょう。
外国人の出産|必要な手続き
次に、外国人が出産をした後、行政に対しておこなう必要のある手続きについて解説いたします。
①出生届の提出(日本の役所)
出生届の提出の流れは以下のようになります。
1. 医療機関が出生届の用紙を外国人の母親または家族に渡す
2. 自宅などで、出生届を記入する
3. 役所の「出生届の窓口」で出生届を提出する(出産後14日以内)
役所は、親が居住している市区町村の役所になりますが、生まれた場所や一時的に滞在している場所の市役所にも出すことができます。
出生届の提出の際の注意点
出生届の提出に必要なものは基本的に以下となります。
・出生届の用紙
・母子健康手帳
・父と母のパスポート
・届出人の在留カード
・その他役所に求められるもの
また、出生届における「子どもの名」は、外国人の場合「カタカナ」で記載し、本国法上の文字(アルファベット)を付記しておきます。
また、出生を証明する公的な証明書は「出生届受理証明書」「出生届記載事項署名書」の2つがあります。役所によってどちらが必要か確認するとよいでしょう。
さらに、その後の入管の手続きに備えて、世帯全員が記載された「住民票」を取得しましょう。
②在留資格の申請(入管)
出生から30日以内に書類を提出し、申請する必要があります。入管への手数料は子どもの在留資格取得の場合は無料です。
在留資格申請の際に必要な書類は以下になります。
書類名 | 入手場所 | 留意点 |
在留資格取得許可申請書 | 出入国在留管理庁のWebサイト 在留資格取得許可申請 | 出入国在留管理庁 | 在留資格に応じて使用する書類の様式が異なります |
質問書 | 出入国在留管理庁のWebサイト 質問書(認定・変更用) | |
出生届受理証明書 | 各自治体役所 | 各自治体の役所 |
子どもを含めた世帯全員の住民票 | 各自治体の役所 | 各自治体の役所で取得。3か月以内に発行したものである必要があります。 |
子どものパスポート原本または「旅券未取得理由書」 | 本国大使館・領事館 | パスポートは本国の大使館・領事館 |
子どもを扶養する人の住民票の課税・納税証明書 | 各自治体の役所 | 各自治体の役所で取得(1年間の総所得及び納税状況が記載されたもの) |
子どもを扶養する人の職業を証明する書類(在職証明書など) | ーー | 子どもが「日本人の配偶者」または「永住者の配偶者等」の在留資格の場合のみ |
子どもを扶養する人の在留カードおよびパスポート | ーー | 申請の際に掲示する必要があります |
身元保証書 | 出入国在留管理庁のWebサイト 身元保証書 | 父または母が、「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」の場合にのみ提出の必要がある |
なお、永住者の在留資格を取得する場合は、通常の「在留資格取得申請」ではなく、「永住許可申請」が必要となります。永住許可申請に必要な書類は、永住許可(入管法第22条) | 出入国在留管理庁から確認いただけます。
③本国への登録(大使館・領事館)
本国に子どもを登録することで、パスポートの発行が可能になります。必要な書類については、国によって様々です。駐日外国公館リスト |外務省から自国の大使館・公館に確認すると良いでしょう。
④その他:健康保険や乳幼児医療証の手続き
国民健康保険は、出生届と同時に加入手続きできることがあります。各自治体のHPを確認する、あるいは問い合わせるなどして確認するとよいでしょう。
また、乳幼児医療証等を提示することで、乳幼児等が医療機関で受診した医療費のうち、保険診療の自己負担分が助成されるという制度があります。乳幼児医療証は別名「マル乳医療証」とも呼ばれます。47都道府県すべてで乳幼児の医療費を助成する制度がありますが、その対象年齢は様々です。18歳までの医療費を助成する制度もあれば、4歳未満までしか助成しない制度もあります。
都道府県・市区町村ごとの乳幼児等に係る医療費の援助制度については、各自治体のHPを確認するか、子ども家庭庁の『令和4年度・5年度「こどもに係る医療費の援助についての調査」』からご覧いただけます。
【補足】手続きについて相談できる団体・法人
手続きについて困ったことなどがあれば、各自治体の相談窓口などに相談しましょう。また、技能実習生の場合、外国人技能実習機構(OTIT)などの機関の支援を受けることもできます。出入国在留管理庁・厚生労働省・外国人技能実習機構が公開している、妊娠している技能実習生向けのリーフレット『妊娠中の技能実習生のみなさんへ』の中に、相談サイトのURLや電話番号が記載されています。
自治体や技能実習機構のほかに、各自治体でNPO法人や行政書士会などが相談窓口を設けています。神奈川県では、神奈川県行政書士会が、5か国の無料電話相談を設置しています。詳細については、神奈川県行政書士会|外国人のお子さんのための無料電話相談からご確認いただけます。
また、以下の記事で外国人の妊婦さんを支援している団体やウェブサイトを紹介しております。ぜひご活用ください。
外国人の出産後手続きについて周囲ができる支援
出産は身体的・精神的に負荷のかかる出来事ですが、さらに言語や文化の異なる外国でおこなうことは、大きな困難を伴うことでしょう。外国籍の母親は、出産後の体力の回復などもままならない状態で、様々な書類手続きをおこなわなければならない可能性があります。そのため、出産後に周囲のサポートがあることが重要です。
医療機関においては、医療通訳などの言語ツールを使用するほか、NPO法人や各地の国際交流協会が提供しているウェブサイトを紹介することも有効でしょう。
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