外国人患者さんの来院対応|保険証など受付での確認事項を解説

  • 2023.11.27

    外国人患者

外国人患者さんの来院時、医療機関においては、保険証の確認や問診票の記入などの受付対応がまず重要になります。

そこで、外国人患者さんの受付対応のポイントや、受付で確認すべき事項、利用できるツールをご紹介します。

日本にいる外国人数の増加

2023年5月に新型コロナウイルス感染症が感染症5類に移行したこともあり、日本にいる外国人の数は増えています。

2023年10月の外国人観光客数は約252万人で、コロナ禍前の2019年同月の人数を超える状態になっています。また、在留外国人の数は出入国在留管理庁の2022年度末の発表で300万人を突破しており、すでにコロナ禍の水準を超え過去最高を記録しています。

外国人の数が増えているため、医療機関に外国人が来院する可能性も増えています。

医療機関においては、まず受付での対応が外国人患者さんの対応において重要です。受付対応の整備は、その後の診察や会計などの業務の円滑化につながります。

在留外国人の16%は病院の受付でうまく話せなかった経験あり

出入国在留管理庁が公開している在留外国人基礎調査報告書によれば、在留外国人の16%は受付でうまく話せなかった経験があると回答しています。

出入国在留管理庁|令和3年度 在留外国人に対する基礎調査
病院で診察・治療を受ける際の困りごと
引用:出入国在留管理庁|令和3年度 在留外国人に対する基礎調査

在留外国人は300万人以上いるため、約50万人の外国人が病院の受付で上手く話せない可能性があると予測できます。

特に、外国人患者さんが予約無しに来院し、日本語を十分に話せなかった場合、どのように問診票を書いてもらえばよいか、受診までの流れをどのように説明すればよいか、困る場合もあるでしょう。本記事では、外国人患者さんが来院したときの受付における対応方法について解説します。

外国人患者さんの受付時に必要な対応・対策3つ

外国人患者さんの受入れにおいて、受付対応は大きな役割を持っています。まず受付でおこなうべき対応・対策を3つ紹介します。

1. 言語の違いへの対応

外国人患者さんの受付対応でまず重要なのが言語の違いへの対応です。
外国人の方だからといって多くの人が日本語が話せないわけではありません。出入国在留管理庁の公開している在留外国人基礎調査報告書によれば、80%以上の外国人が日常会話なら問題ないと回答しています。

しかし、医療の診察の場面などで用いられる会話は日常会話よりは難しい場合がほとんどであるため、言語ツールが必要になることが多いでしょう。

言語ツールには

・やさしい日本語
・機械翻訳
・医療通訳
・指差しツール

などがあり、状況に応じて上記等のツールを有効活用することが重要です。

受付ではまず、その患者さんがどの程度日本語を話せる方なのかを確認して、どのツールで対応するのかの判断が必要になります。具体的な対応フローはブログの後半で解説します。

それぞれのツールの違いや役割については以下の記事で詳しく解説しております。ぜひご活用ください。


>>>「外国人患者の看護|コミュニケーションに役立つツールや対応手順を解説!」

2. 医療制度や文化習慣の違いに配慮した対応

次に重要なのが、医療制度や文化習慣の違いに配慮した対応です。
医療制度においては、会計までの流れや保険証の有無による医療費の違いなど、日本と外国の医療制度は異なることが多く、それを理解していないがゆえに、トラブルになることもあります。保険証の有無による窓口負担の違い、紹介状や選定療養費の説明など、よくする説明を外国語でどのようにおこなうかを決めておくと良いでしょう。

また、マスクをする・院内で写真や動画を撮影しないなどの日本の医療機関でのルールについても注意喚起がスムーズにおこなえるように説明資料などがあると便利です。さらに、発熱や咳の有無を確認するポスターなどに、多言語表記やイラストを追加することは、感染症対策として有効です。

3. 未収金対策

前述したように、未収金対策が起こる原因で重要なものが医療制度の違いです。海外では医療費が前払いだったり、事前に提示されたりする国も多く、日本のような後払いは決してスタンダードではありません。また医療保険の制度も国によって異なり、イギリスなど医療費が無料の国もあれば、中国のように病院や医師によって医療費が異なる国も珍しくありません。

未収金対策としては、受付で医療費の概算(外来でよくある受診パターンや検査等の概算費用一覧)の提示や、顔写真入りの身分証明書の確認などが有効です。特に日本に住んでいない訪日外国人の場合は、自由診療となり自己負担額が大きくなります。厚生労働省では、一定以上の医療費不払いがある訪日外国人について、再入国審査を厳格化するシステムを運用しています。このシステムに医療機関として登録し、「当院で不払いをすると国に報告がいき、再入国ができなくなる可能性がある」ことを、受診する訪日外国人に周知することで、支払いに対する意識を高める効果も期待できます。

未収金対策については以下の資料で詳しく解説しておりますので、ぜひご活用ください。


>>>お役立ち資料「未収金対策マニュアル
をダウンロードする(無料)

外国人患者さんが来院した際の対応フロー

外国人患者さんが実際に来院した際に受付でおこなうべき対応について解説いたします。

1. 患者さんの日本語レベル・母語を確認する

言語が通じないと円滑にコミュニケーションが取れず、必要な情報を回収できません。外国人患者さんといっても日本語のレベルは様々であるため、外国人患者さんの日本語のレベルを確認し、その後適切な言語ツールを選択することが重要になります。

以下の画像は日本語能力の判断とそれに応じた言語サポートの選択肢を示しています。

受付で担当者が「症状を教えてください。」「この病院は初めてですか。」「健康保険証を持っていますか。」「熱・咳・息切れなどはありませんか。」などの質問をおこない、その回答の内容によって評価するというようなルールを決めておくと良いでしょう。

ある程度日本語を話せており、診察などの難しい場面でも日本語が話せそうな場合、やさしい日本語を用いると良いでしょう。日常会話などでは問題ないが、診察の場面では難しそうな場合、受付などの簡単な会話の場面ではやさしい日本語を用い、診察室では医療通訳を利用すると良いでしょう。また、日本語が話せない場合は全ての場面で医療通訳者による通訳を用いると良いでしょう。

しかし、日本語が話せる外国人患者さんであっても、読み書きはできない場合があります。日本語レベルを確認した後に、渡す診察申込書や問診票が日本語で問題ないか確認すると良いでしょう。

2. 母語ごとの診察申込書と問診票を渡し、記入を依頼する

患者さんが日本語の読み書きが難しい場合、母語に翻訳された診察申込書と問診票を渡すと良いでしょう。
各言語の診察申込書や問診票の一部はインターネット上に公開されています。こうした無料のツールも活用しながら、最初の情報を正確に取得できるようにしましょう。

厚生労働省の補助事業の1つとしてメディフォン株式会社が運営している外国人患者受入れ情報サイトでは、インターネット上に無料で公開されている多言語ツールをまとめて公開しております。ぜひご活用ください。

3. 写真付き身分証明書の提出を依頼する

診察申込書と問診票を受け取った後は、写真付き身分証明書の提出を依頼します。在留外国人の場合は在留カードやマイナンバーカード、訪日外国人の場合はパスポートなどを持っています。
写真付き身分証明書を受け取ったら、診察申込書の氏名と一致するか、顔写真が本人と一致するか確認しましょう。

なお、患者さんの症状で、呼吸器症状や消化器症状があったり、発熱・発疹がある場合は感染症の疑いがあります。外国人であっても確認や指示を省略せず、日本人と同じように院内の感染症対策のルールに従って対応することが重要です。

4. 保険の加入有無・種類を確認する

診察申込書から、日本に住んでいる人かどうか・公的保険への加入しているかどうかを確認し、保険証の提出を依頼します。
公的医療保険に加入していない場合は自由診療となります。海外旅行保険など他の医療保険の加入有無やその保険の種類を確認し、必要に応じて保険会社のコールセンターに連絡してもらうなど、種類に応じた対応をおこないましょう。保険に加入していない場合、概算費用の提示などをし、最初に支払い能力を確認することが後の支払いトラブルの防止につながります。

【補足】海外旅行保険への対応

海外旅行保険には、大きく分けると立替払い型と直接支払い型の2種類があります。立替払い型の場合は通常通り患者さんに支払いいただければ問題ありません。直接支払い型の場合、保険会社から病院へ直接支払ってもらうことになります。直接支払い型の保険でも、保険会社から「支払い保証証」が取得できるまで確実に支払ってもらえるとは限りません。
未払いとなるリスクを避けるために、まずは患者さんから保険会社に連絡してもらい、患者さんが退院するまでに保険会社から「支払い保証書」を受け取るようにしましょう。

海外旅行保険を持った外国人患者さんへの対応方法については、以下の資料で詳しく解説しております。ぜひご活用ください。


>>>お役立ち資料「未収金対策マニュアル
をダウンロードする(無料)

外国人患者さんの受付対応のポイント

次に、外国人患者さんの受付対応のポイントを解説いたします。

トラブルになる・なりそうな場合は医療通訳を使う

受付の場面では定型的な会話が多いため、常に医療通訳が必要ではないでしょう。しかし、やさしい日本語や機械翻訳、指差しツールなどでは対応できない事態に遭遇する場合も少なくありません。トラブルを避けるためにも、うまく通じなかった場合に医療専門の通訳者につなげられる環境は整えておきましょう。

事前の体制整備が重要

医療通訳を導入する以外にも、受付での対応を円滑に進めるためには医療機関としての体制整備が重要です。

外国人が来院した際の対応のマニュアルを作成する、翻訳された診察申込書や問診票、指差しツールを用意するなどの準備が考えられます。

以下に外国人患者さんの受付対応に使えるツールを紹介しますので、ぜひご活用ください。

外国人患者さんの受付対応に使えるツール一覧

ツール名作成者
外国人患者さん来院時の対応マニュアル
(日本語ツール、院内用)
メディフォン株式会社
受付用指さしシート 英語メディフォン株式会社
多言語診察申込書 英語メディフォン株式会社
外国人向け多言語説明資料 6言語厚生労働省
多言語医療問診票 23言語NPO法人国際交流ハーティ港南台/公益財団法人かながわ国際交流財団
上から3つの資料は合せてご利用いただけるとより便利にご活用いただけます。

外国人患者受入れ情報サイトにてインターネット上に無料公開されている資料をまとめていますので、以上のほかにも資料をお探しの方はぜひご活用ください。

また、無料で公開されている資料では十分な対応ができない場合もあるかと思います。メディフォンでは、指差しツールや院内資料の翻訳も承っております。以下からお気軽にお問い合わせください。



>>>「外国人患者受入れ支援サービスmediPhone」についてお問い合わせする

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外国人患者さんの受付対応を充実させ、受入れ全体を円滑に

本記事では、外国人患者さんの受付対応で確認するべき事項や実際の対応の流れについて解説し、実際に使えるツールを紹介いたしました。

外国人患者さんの受付対応は、言語能力や支払い能力の確認など、その後の受入れの円滑さに大きな影響を及ぼします。そのため、最初の受付対応を漏れなく確実におこなうことは外国人患者さんの受入れ全体において非常に重要です。

外国人患者さんの来院が多い医療機関などでは、受付対応のマニュアルを作成したりスタッフで外国人対応について学んでおくことで、安全かつ円滑に、そして安心して業務をおこなえるようになるでしょう。
また、外国人患者さんがあまり来ていない医療機関でも、今後外国人の数が増加し、外国人患者さんが来院する可能性は高まります。本記事で紹介したツールをダウンロードするなどして、外国人患者さんが来院したとしても安心して医療を提供できるような準備をしておくと良いでしょう。



医療通訳対応10万件以上の実績をもち、全国約88,000の医療機関でご利用いただける、医療に特化した多言語通訳・機械翻訳サービス「mediPhone(メディフォン)」のサービス資料は以下からダウンロードできますので、ぜひご活用ください。


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著者情報

多言語医療ジャーナルPORT(ポルト)編集部

メディフォンは2014年1月のサービス開始以来、医療専門の遠隔通訳の事業者として業界をけん引してきました。厚生労働省、医療機関、消防などからのご利用で、現在の累計通訳実績は10万件を超えております。「多言語医療ジャーナルPORT(ポルト)」は、メディフォンがこれまでに培った知識・ノウハウをもとに、多言語医療に携わる方々のための情報を発信するメディアです。

監修者情報・友久 甲子

友久 甲子

メディフォンの遠隔医療通訳サービスや外国人患者受入れに関する研修事業の立ち上げを経験。外国人患者受入れに関する研修・セミナーの運営や講義を数多く担当し、医療機関の外国人患者受入れ体制整備コンサルティングや外国人患者受入れマニュアルの作成支援等にも数多くの実績を有する。令和元年度・令和2年度厚生労働省「外国人患者受入れ医療コーディネーター養成研修事業」研修カリキュラムテキスト作成担当・研修講師。令和4年度厚生労働省「医療費の不払い等の経歴がある訪日外国人の情報の管理等に関する仕組みの運用支援事業」有識者委員。