外国人患者受入れ医療コーディネーターとは?役割や現在の設置状況を解説!

  • 2024.05.10

    外国人患者

外国人患者受入れ医療コーディネーターは、外国人患者さんの受入れを安全かつ円滑におこなうために重要な役割です。
本記事では、外国人患者受入れ医療コーディネーターの日本における配置状況や、設置の手順について詳細に解説しています。

外国人患者受入れ医療コーディネーターとは?

外国人患者受入れ医療コーディネーターとは、外国人患者さんやご家族とのコミュニケーションに加え、院内外と連携や調整をおこなう役割です。厚生労働省資料では以下のように定義されています。

「外国人患者が医療機関を訪れた際、当該医療機関内における一連の手続をサポートし、必 要に応じて、他の医療機関を紹介するなど、円滑な医療体制を支える潤滑油的な役割を担 う調整役。(中略)例えば、外国人患者や家族への支援、医療従事者の負担軽減と支援、医療機関における外国人患者の未収金等のトラブル回避及び対応、医療通訳者のサポートなど。」

引用:厚生労働省 第3回 訪日外国人旅行者等に対する医療の提供に関する検討会 議事録

外国人患者さんを受け入れる際、受入れに慣れていない医療機関では、様々なトラブルや混乱が起こる可能性があります。そこで、外国人患者さんが日本人の患者さんと同じように安全に医療を受けられるよう、院内外で様々なサポートや調整をおこなう外国人患者受入れ医療コーディネーターが重要なのです。

【補足】国際医療コーディネーターとの違い

よく似た言葉で、「国際医療コーディネーター」があります。外国人医療に携わるという点では一緒ですが、役割は全く異なります。国際医療コーディネーターとは、日本で医療サービスの受診を希望する外国人に対して、医療機関とのマッチングや医療通訳の用意などのサポート業務をする人です。

国際医療コーディネーターは民間事業者やNPOなどに所属し、外国人患者さんからの依頼を受けて業務を行いますが、外国人患者受入れ医療コーディネーターは、医療機関に所属して業務をおこなうという点が大きな違いです。

外国人患者受入れ医療コーディネーターの役割のポイント2点

外国人患者受入れ医療コーディネーターの役割のポイントは、安全かつ円滑な受入れをおこなうこと、院内外の調整をおこなうことの2点あります。それぞれ解説します。

①安全かつ円滑な受入れをおこなう

「外国人患者受入れ医療コーディネーター」は、外国人患者さんに対して日本人以上に手厚い対応をするための人ではありません。

外国人患者さんの場合、言語や文化・習慣などさまざまな点で日本人患者と異なるため、通常に比べて「安全レベルが下がる」あるいは「円滑さが失われる」ということが起こりがちです。外国人患者受入れ医療コーディネーターはこの「安全性や円滑さの低下」が外国人患者さんにおいて起こらないようにする人です
外国人患者さんだから「普段より手厚い対応をプラスする」のではなく、「マイナスになりがちなものをゼロ(通常と同じ)に保つ」という医療安全的な意味合いが強い役割と言えます。

この点は、院内で認識の相違が起きていることも少なくありません。認識の相違によって院内の連携が円滑に進まないこともあるため、院内全体で役割についての認識を合わせるとよいでしょう。その認識は、外国人患者さんの対応をどのようにおこなうか等を院内で検討する際の指針の一つにもなるでしょう。

外国人患者さんを受け入れる際の心配事の1つである、「医療費の未払い」の原因と対策について解説した記事は以下になります。ぜひご活用ください。

②院内外の調整をおこなう

外国人患者受入れ医療コーディネーターはその名前の通り「調整(coordination)」が仕事です。「院内外」のさまざまな職種・部署・機関等と「調整」をすることで、医療機関全体での安全かつ円滑な受入れを実現する人です。

外国人患者受入れ医療コーディネーターを「外国人患者担当」と考えると語学力や他国の文化についての知識が必要ではないかと考えられるかもしれませんが、語学力がない場合でも業務をおこなうことができます。

コーディネーターの中心的な役割は調整であり、言語が話せることよりも、さまざまな言語サポートをうまく活用して外国人患者とコミュニケーションを取ったり、院内外の関係者とうまく連携できたりすることが重要です。コーディネーターと医療通訳を兼任するケースもありますが、コーディネーターと医療通訳者は異なる役割を持っていますので、適任者も異なることには注意が必要です。

外国人患者受入れ医療コーディネーターの配置状況

次に日本の医療機関における、外国人患者受入れ医療コーディネーターの配置状況について紹介していきます。

外国人患者受入れ医療コーディネーターを配置する病院はわずかに増えている

以下は、厚生労働省の「医療機関における外国人患者の受入れに係る実態調査」において、回答した全医療機関の中で、外国人患者受入れ医療コーディネーターがいる医療機関の割合の、平成30年から令和3年までの推移を示したグラフです。

参考:厚生労働省 医療機関における外国人患者の受入れに係る実態調査(平成30年令和元年令和2年令和3年

グラフを見ると、外国人患者受入れ医療コーディネーターを配置する医療機関の数は徐々に増えているということがわかります。また、令和3年度の実数値では、148の医療機関が外国人患者受入れ医療コーディネーターを配置していると回答しています。

外国人患者受入れ医療コーディネーターは兼任が多い

以下のグラフは、外国人患者受入れ医療コーディネーターを配置している医療機関におけるコーディネーターの兼任状況について、平成30年から令和3年までの推移を表しています。

参考:厚生労働省 医療機関における外国人患者の受入れに係る実態調査(平成30年令和3年

グラフによれば、平成30年に比べて令和3年では兼任の外国人患者受入れ医療コーディネーターがいる医療機関の割合が増えています。外国人患者受入れに関する業務のみをおこなう人を雇用することは費用面で難しいかもしれません。その場合、外国人患者の来院状況によっては、兼任でも十分対応することができます。
院内の状況を踏まえて、兼任にするか専任にするかを決定すると良いでしょう。

外国人患者受入れ医療コーディネーターに必要なスキル

「院内外において、外国人患者を安全かつ円滑に受け入れるための調整役」たるコーディネーターには、外国人患者さんに関する特有の知識やスキルももちろん必要ですが、院内外の調整を行うという役割を果たすために、通常の患者受入れの場面において医療機関がどのように組織として機能しているかもしっかりと理解している必要があります。

そのため、外国人患者さんの受入れコーディネートをするためには「外国人患者受入れ医療コーディネーター特有の知識・スキル」と「医療機関職員一般の知識・スキル」の両方が必要になります。

また、先ほども記したように「調整」が業務であるため、語学力や海外経験などはあったほうが望ましいですが、無くても問題ありません。

外国人患者受入れ医療コーディネーターの設置の際のポイント2点

外国人患者受入れ医療コーディネーターを設置する際のポイントについて紹介します。

1. 外国人患者さんの来院状況を把握してから外国人患者受入れ医療コーディネーターの設置の仕方を決める

外国人患者受入れ体制を整える際は、自院の外国人患者さんの来院状況や外国人患者さんに対する病院としての方針を定めたのちに、外国人患者受入れ医療コーディネーターの配置について考えると良いでしょう。

その際に、外国人患者さんの来院数が非常に多い場合は国際診療部のような国際専門の役職を置くこともできますし、それほど多くない場合は、兼任で外国人患者受入れ医療コーディネーターを置くなどの対応もできます。


メディフォンには、医療機関の外国人患者受入れの現場を熟知したスタッフが多く在籍しているため、外国人患者受入れ体制整備や患者対応に係る課題について、医療機関の状況に応じて柔軟に支援することができます。外国人患者さんの受入れ体制整備についてお困りのことなどございましたらお気軽にご連絡ください。

2. 厚生労働省の外国人患者受入れ医療コーディネーター養成研修を活用する

厚生労働省は毎年外国人患者受入れ医療コーディネーター養成研修を開催しています。外国人患者受入れ医療コーディネーターの方が決まった際には、当研修を受講してもらうようにすると良いでしょう。

詳細については、厚生労働省の「医療の国際展開」のページからご覧いただけます。

【補足】厚生労働省:外国人患者受入れ医療コーディネーター配置等支援事業の活用

また、厚生労働省では、「外国人患者を受入れる拠点的な医療機関」を対象に外国人患者受入れ医療コーディネーター配置等支援事業をおこなっています。具体的には、医療機関における医療通訳者の配置、外国人患者受入れ医療コーディネーターの配置、体制整備の支援を行う事業です。

詳細については、厚生労働省の「医療の国際展開」のページからご覧いただけます。

外国人患者受入れ医療コーディネーターを設置して、安全で円滑な外国人患者受入れを

本記事では、外国人患者受入れコーディネーターの役割や日本における配置状況、そして実際に配置する際の手順について解説しました。

外国人患者さんの場合、言語や文化・習慣などさまざまな点で日本人患者と異なるため、通常に比べて「安全レベルが下がる」あるいは「円滑さが失われる」傾向にあります。そのため、医療機関の方は外国人患者さんの受入れに慣れていない場合、不安を感じることも少なくないでしょう。

外国人患者受入れ医療コーディネーターは、外国人患者さんが日本人の患者さんと同様に「安全」かつ「円滑」に医療を受けられるようにする役割を担っています。外国人患者受入れ医療コーディネーターがいることで、外国人患者受入れにおける医療スタッフの様々な不安が解消され、安全かつ円滑な受入れの実現に近づくでしょう。






メディフォンでは、医療機関の外国人患者受入れ体制の整備を包括的に支援させていただいております。外国人患者受入れに関しましてお困りごとなどございましたらお気軽にお問い合わせください。

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著者情報

多言語医療ジャーナルPORT(ポルト)編集部

メディフォンは2014年1月のサービス開始以来、医療専門の遠隔通訳の事業者として業界をけん引してきました。厚生労働省、医療機関、消防などからのご利用で、現在の累計通訳実績は10万件を超えております。「多言語医療ジャーナルPORT(ポルト)」は、メディフォンがこれまでに培った知識・ノウハウをもとに、多言語医療に携わる方々のための情報を発信するメディアです。

監修者情報・友久 甲子

友久 甲子

メディフォンの遠隔医療通訳サービスや外国人患者受入れに関する研修事業の立ち上げを経験。外国人患者受入れに関する研修・セミナーの運営や講義を数多く担当し、医療機関の外国人患者受入れ体制整備コンサルティングや外国人患者受入れマニュアルの作成支援等にも数多くの実績を有する。令和元年度・令和2年度厚生労働省「外国人患者受入れ医療コーディネーター養成研修事業」研修カリキュラムテキスト作成担当・研修講師。令和4年度厚生労働省「医療費の不払い等の経歴がある訪日外国人の情報の管理等に関する仕組みの運用支援事業」有識者委員。