派遣の医療通訳とは?メリットと利用の際の注意点を解説!

  • 2023.07.19

    医療通訳

アイキャッチ「医療通訳 派遣」

医療通訳は、従来は派遣型が主でしたが、需要の高まりとともに遠隔での通訳や機械翻訳などの様々な手法が出てきました。本記事では、医療通訳者を派遣してもらい、対面で通訳してもらうという従来からの手法の特徴やメリット・デメリットなどを解説します。

派遣の医療通訳とは?

医療通訳者に現地に来てもらって通訳をしてもらうことです。多くの場合、日本語を話さない患者さんの来院予定に合わせて、医療通訳者を派遣している事業者・団体に問い合わせて予約を行い、当日に来てもらうという流れになります。

派遣の医療通訳のメリット2点

専門の医療通訳者による通訳を利用する場合は、最近利用が増えている電話やインターネットを利用した遠隔の通訳という選択肢もありますが、今回は派遣の医療通訳を利用するメリットを解説します。

一方、遠隔通訳のメリットや注意点については以下の記事をご活用ください。


>>>「遠隔通訳とは? 利用前に知っておきたいメリットと注意点を解説!」

コミュニケーションの円滑さ

対面での通訳のメリットの1つは、コミュニケーションの円滑さです。言語情報以外にも身振りや手ぶりといった非言語情報を読み取ることができやすいですし、「あれ」「こちら」といった指示語を使用した場合でも、遠隔通訳と比べると訳す難易度が低いでしょう。

また、対面の方が、顔の見えない電話通訳より患者さんの状況などを察知しやすく、円滑な意思疎通の支援ができることも多いです。病状説明や侵襲性のある手術に向けた説明と同意を取る場では、対面のほうが安心できるという患者さんや医療従事者の方も多いでしょう。

ただし、言葉以外の情報を汲み取ってコミュニケーションができるか否かは通訳者のレベルに大きく依存することには注意が必要です。対面でも遠隔でも、質の高い医療通訳者に依頼することが患者さんとのコミュニケーションの質を高める最も良い方法です。

慣れない通訳者に対面で通訳してもらうよりも、スキルの高い医療通訳者に電話で通訳してもらう方が、結果として良いということはよくありますので、派遣してもらう医療通訳者のスキルについては十分に確認することが重要です。

もし、難しい場面にも関わらず、レベルの高い通訳者の派遣ができない場合は、経験豊富な医療通訳者へのビデオ通訳依頼を検討してみても良いでしょう。病状説明や手術に向けた説明と同意を取る場であっても、視覚情報を加味できるビデオであれば対面の通訳に近い情報量で円滑な通訳をおこなえます。


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対面の通訳は患者さんのケアの役割も

また、外国人患者さんの中には対面で通訳者がいたほうが安心できるという場合もあります。言葉が通じない異国の地にいること、そして、自分の体調などが悪い状況にあるがその原因がわからないなどという状況を踏まえると、外国人患者さんは不安を抱えやすい傾向にあります。

不安を抱えている外国人の患者さんにとって、母国語を話せる人がすぐ近くにいることは、ある程度不安を和らげる効果があるでしょう。もちろん、電話通訳やビデオ通訳では不安が和らがないわけではないですが、より対面の方が効果が強いでしょう。

一方で、外国人患者さんの考え方や病状・病気の種類などによっては、対面ではなく遠隔、特に顔の見えない電話の方が、プライバシーや感染予防の観点から望ましい場合もあります。患者さんの安心のためには必ず対面の方が良いという訳ではない点は注意が必要です。

また、対面で待ち時間など医療者がいない場面でもずっと一緒にいることで、患者さんが医療通訳者に依存してしまったり、通訳者が患者さんに過度に感情移入をしてしまい、中立的な通訳ができなくなってしまうケースも見受けられます。
この点も、医療通訳倫理を十分に学んだ医療通訳者であれば回避できますが、訓練をあまり積んでいない通訳者ですと起こりがちな点ですので、医療通訳者レベルの十分な確認が重要です。

派遣の医療通訳のデメリット2点

派遣の医療通訳の主なデメリットとしては、費用がかかること、急患対応が難しいことが挙げられます。それぞれ解説していきます。

1. 派遣通訳は費用がかかりやすい

派遣通訳は遠隔通訳に比べて費用が高い傾向にあります。なぜなら、現地への行き来にかかる移動時間や通訳をしていない待ち時間の分だけ通訳者の拘束時間が長いためです。

また、通訳を予約していた時間に外国人患者さんの診察がはじまらないこともあるでしょう。そのため、待ち時間も含めると、一件の通訳に半日程度かかることもよくあります。多くの場合で通訳者の拘束時間が長いほど、多くの報酬を支払う必要があります。

さらに、場合によっては外国人患者さんの来院自体がキャンセルになり、医療通訳者の派遣もキャンセルや時間変更を都度しなければならず、その際にキャンセル料がかかることもあります。こうした急な状況の変化に、派遣での通訳は対応しづらいのです。

2. 急な患者対応や深夜対応が難しい

派遣の医療通訳の2点目の弱点は、外国人患者さんの急な対応が必要な際の通訳利用が難しいことです。

派遣の医療通訳を利用する場合、数日前から依頼しておく必要があります。予約なしで飛び込みで来院した患者さんや救急で運ばれてきた患者さんが、日本語でのコミュニケーションが難しい場合、医療通訳者の派遣を依頼していては間に合いません。

他にも、例えば外国人の入院患者さんから深夜に呼び出しがあった際に、医療通訳者の派遣を依頼することは難しいでしょう。救急や深夜などの予期できない外国人患者さんの対応が生じた際は、派遣の医療通訳以外の方法が必要でしょう。

医療通訳の派遣を利用する際の注意点2点

1. 派遣通訳者の確保

都市圏では質の高い医療通訳者を比較的確保しやすいですが、その他の地域の場合は通訳者が遠方にいる場合も多く、交通費がかかりやすいでしょう。

また、英語や中国語などの通訳者数の多い言語は問題ないかもしれませんが、希少言語の場合は通訳者を見つけることが難しい場合もあり、注意が必要です。地域や言語によっては、通訳の派遣を希望しているが、適切な通訳者が確保できないケースも少なくありません。

上述したように、質の高い医療通訳者であれば、遠隔通訳でも質の高いコミュニケーションを取ることが可能です。派遣通訳だけにこだわらず、遠隔通訳も含めて質の高い通訳者の確保を目指すことが重要です。

2. 感染症対策

また、派遣通訳者を自院で受入れる際のもう一つの注意点として、感染症対策があります。対面通訳者は患者と院内で長時間一緒にいることから、感染症対策として医療従事者と同様のワクチン接種や抗体価の確認を義務付ける病院も増えてきています。

海外の出身の方の場合、日本で生まれ育った人とは予防接種歴が異なることがよくあります。

厚労省「外国人患者の受入れのための医療機関向けマニュアル」には「諸外国、特に、アジア、アフリカ圏では麻疹、風疹、結核の感染リスクが高いです。

特に受付職員、事務員は感染性の高い疾患に罹患した患者に接触する可能性が高いにも関わらず医療機関としての対応が漏れがちであるため、注意を要します。」と解説がありますが、派遣通訳についても受付職員・事務員と同様あるいはそれ以上に患者との接触があるため、注意をしておく必要があります。

派遣通訳者の受け入れの際に、どんな病気の抗体価について確認をとっておくべきか、院内の感染症対策チームと検討しておくと良いでしょう



メディフォンでは、医療通訳者の派遣も承っており、派遣の際には、医療機関様のご要望に応じて各種ワクチンの接種や感染対策の実施を通訳者に義務付けております。メディフォンの医療通訳派遣サービスにつきましてご不明点などございましたら、お気軽にお問い合わせください。



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また、医療通訳を選定する際の注意点については、以下の記事もご活用ください。


>>>「医療通訳にかかる費用とは?相場や費用節約のコツを解説!」

派遣の医療通訳は状況に応じて賢く活用しましょう!

派遣の医療通訳のメリットや注意点などについて解説してきました。近年は遠隔の医療通訳や機械翻訳の普及が著しいですが、派遣の通訳にしかないメリットもあります。

そのため、場面や状況に応じて、医療通訳の種類を使い分けていくことが重要です。医療通訳の種類・特徴を知り、どんな場面に適しているかを普段から考えておくことで、便利に使い分けできるでしょう。





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著者情報

多言語医療ジャーナルPORT(ポルト)編集部

メディフォンは2014年1月のサービス開始以来、医療専門の遠隔通訳の事業者として業界をけん引してきました。厚生労働省、医療機関、消防などからのご利用で、現在の累計通訳実績は10万件を超えております。「多言語医療ジャーナルPORT(ポルト)」は、メディフォンがこれまでに培った知識・ノウハウをもとに、多言語医療に携わる方々のための情報を発信するメディアです。

監修者情報・友久 甲子

友久 甲子

メディフォンの遠隔医療通訳サービスや外国人患者受入れに関する研修事業の立ち上げを経験。外国人患者受入れに関する研修・セミナーの運営や講義を数多く担当し、医療機関の外国人患者受入れ体制整備コンサルティングや外国人患者受入れマニュアルの作成支援等にも数多くの実績を有する。令和元年度・令和2年度厚生労働省「外国人患者受入れ医療コーディネーター養成研修事業」研修カリキュラムテキスト作成担当・研修講師。令和4年度厚生労働省「医療費の不払い等の経歴がある訪日外国人の情報の管理等に関する仕組みの運用支援事業」有識者委員。