医療関係者必見!医療通訳者と協働するための6つのポイントを解説

  • 2023.07.19

    医療通訳

アイキャッチ「医療通訳者」

日本語の不自由な患者さんの診療などには欠かせない医療通訳ですが、医療通訳者との協働のポイントを押さえておくと、よりスムーズに外国人医療をおこなうことができます。

本記事では医療従事者の方向けに、医療通訳者との協働のポイントを6つ解説していきます。

医療通訳者の役割

厚生労働省の資料では、医療通訳者の役割は以下のように定義されています。

・医療、保健分野における必要な関連知識や語彙、能力と技能を持ち、診療等の場面において、 言葉の媒介者として、話し手の意図を正確に理解して、聞き手にその内容を忠実に伝え、対話者間の効果的なコミュニケーションを可能にする。

・言語的、文化的、社会的に異なる医療従事者と患者等の間に入り、両者の相互理解を支援するため、必要に応じて専門家と患者の間の文化的橋渡しを行う。


引用:厚生労働省 医療通訳

医療通訳者の役割は、ただ言語の仲介をするだけではなく、文化・習慣などに配慮して医療者と患者のコミュニケーションを仲介することです。

医療通訳者に求められるスキル

医療通訳者には正確に通訳をおこなうための言語力以外にも、状況を理解して配慮する力が求められます。

正確な通訳のための言語力

医療通訳の原則は、「足さず、引かず」と言われています。医療通訳者はあくまでコミュニケーションの仲介者であるため、例えば医者の発言にはないような患者へのアドバイスをすることは好ましくないとされています。医療者の発言を正確に患者に伝え、患者の発言を正確に医療者に伝えることが第一に重要です。

そのためには、医療通訳者は医療用語や医療機関でよく用いられる表現などに習熟している必要があります。
厚生労働省が中心として作成した「医療通訳者育成カリキュラム基準」の中でも、医療通訳者は身体の仕組みや疾患の基礎知識に加えて検査や薬の知識など、医療全般について学習することが定められています。

状況を理解して配慮する力

また、日本と諸外国との文化・宗教・習慣・医療制度等の違いについても医療通訳者は配慮する必要があります。

例えば、アジアの一部の国などでは、家族や雇われた世話人が入院中の患者の世話をすることが当たり前の国があります。

こうした国の患者さんが日本の医療機関に入院した場合、事前にしっかりと説明をしておかないと、面会に来たご家族が面会時間が終わっても病室に留まってそのまま宿泊しようとしたり、食事も家族が持ち込んだものを食べるつもりだったりして、医療機関側が困ってしまう場合があります。

上記のような例では、患者さんや家族に悪気があるわけでも、特段モラルが低いわけでもありません。医療に関する日本と諸外国との文化・宗教・習慣・医療制度等の違いによってトラブルが起きているのです。

互いの違いがトラブルに繋がってしまう可能性があるため、医療通訳者は言語だけではなく、文化・宗教・習慣・医療制度等の違いも踏まえてコミュニケーションを仲介する必要があるのです。

そのほか、医療通訳者に求められるスキルについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください


>>>「医療通訳の資格とは? 医療通訳者に必要なスキル4つと育成方法を解説!」

チーム医療の一員としての医療通訳者

医療通訳者はその役柄上、患者から相談を持ち掛けられることがあります。また、文化や習慣の違いなどから、他の医療者では中々気づきにくい患者の変化などに通訳者が気づくことがあります。医療通訳者には状況に応じて患者の状況を他の医療者に情報共有をすることが期待されます。

こうした連携を医療通訳者に適切に行ってもらうために、外国人患者さんの診療を行う際には、医療従事者の方が医療通訳者を「チーム医療」の一員として見なし、協働する意識を持つことが重要です。

以下で、外国人患者対応において、医療通訳者とうまく協働するためのポイントをご紹介します。

医療通訳者との協働のポイント6つ!

医療通訳者と協働するポイントは以下の6つあります。

1. 専門の医療通訳者に依頼する

2. 医療通訳者の業務範囲を知っておく

3. 医療通訳者ではなく患者さんに向き合う

4. 医療通訳者が通訳しやすい話し方をする

5. 医療通訳者から医療者への確認・相談があるということを知っておく

6. 通訳者の通訳能力を知っておく

順番に解説していきます。

1. 専門の医療通訳者に依頼する

まず重要なのは、医療通訳者としての専門教育を受けた通訳者に依頼することです。

患者さんの家族や知人に通訳を依頼すると、家族や知人は自分の意見を交えて話してしまう場合があり、患者さんと正確な意思疎通が難しくなります。

また、医療通訳者としての教育を受けていないと、秘密保持といった原則を知らずに患者さんの情報を第三者に漏らしてしまう可能性もあり、患者さんが自分の症状に関する私的なことについて話しにくくなってしまうことなども考えられます。

さらに、医療の専門性の高い内容の場合は、正確に通訳できない可能性がありますし、病状が深刻である場合、家族や通訳者自身の精神的な負担が大きいなどの問題が発生する可能性もあります。

以上の理由などから、厚生労働省は、専門の医療通訳者に依頼することを推奨しています。

2. 医療通訳者の業務範囲を知っておく

医療通訳者は患者さんと医療者を結ぶ重要な役割であり、両者の言葉を理解する唯一の存在であるために患者さん側でも医療者側でも医療通訳者に頼りきり、あらゆることを医療通訳者に依頼しようとする傾向があります。

しかし、医療通訳者は患者の家族や友人ではなく、あくまで「医療通訳」を業務とする専門家であるため、通訳業務に集中して正しい通訳ができるように以下のような医療通訳の役割ではないことの依頼はしないようにしましょう。

・文書の翻訳

通訳と翻訳は似ていますが、必要な能力が異なる業務です。通訳者として非常に優秀な人でも同意書の難解な漢字が読めなかったり、書き言葉独特の言い回しや熟語の理解に不安があったりすることもあります。

そのため、あらかじめ翻訳されていない文書について「説明しておいてください。」と通訳者にすべて任せてしまうと誤訳のリスクが高まります。翻訳されていない文書については医療者が口頭で患者さんにもわかるような言葉で説明をして、その説明を通訳者に通訳してもらうようにしましょう。

・車椅子を押す、ベッドの乗り降りを手伝うなど患者の身体をさわる行為

転倒など医療安全上のリスクがあるため、依頼は極力控えた方が良いでしょう。

なお、その医療通訳者が医療機関のスタッフで、患者さんの身体を触るような業務をおこなって良い立場の人である場合は例外です。

・緊急連絡先や保証人になること

通訳者は患者の家族や友人ではありません。個人的な関係性はないため通訳者には依頼せず、患者さんに緊急連絡先や保証人になってくれる家族や友人がいないかの確認を取るようにしましょう。

・その他、買物代行など簡単な手伝い

通訳者の本来業務ではなくトラブルの原因になる可能性があるため、やむを得ない場合以外は、極力依頼しない方が良いでしょう。

3. 通訳者ではなく患者さんに向き合う

医療通訳を利用する際に医療者が気を付けなければならないのは、文字通り「患者さんに向き合う」ことです。

通訳者を介して患者さんと会話することになるため、医療者は通訳者に向かって話してしまいがちですが、患者との信頼関係を築きスムーズな治療を進めるためには、言葉が通じなくても患者さん本人に話しかけることが重要です。できるだけ通訳者ではなく患者に向かって話すように心がけると患者さんとの信頼構築に有効です。

また、医療通訳者は診察室内の医療者の発話をすべて通訳するのが原則であるため、患者さん自身が日本語を理解していない場合でも、日本語の話せる患者と同じように対応し、患者さんに聞かれてはいけない内容を患者さんのいる場で話さないようにしてください。

4. 通訳者が通訳しやすい(誤訳をしにくい)話し方を心がける

通訳者が十分な能力をもっていたとしても、医療者が早口で話す・難解な専門用語を羅列するなどすると通訳が困難になり、誤訳を引き起こす可能性があります。

医療者と医療通訳者は、外国人患者さんへの安心・安全な医療の提供のためにともに協力し合うチームであることを意識して、通訳者が通訳しやすいように以下などの点を意識して話すと良いでしょう。

・はっきり、早口にならないように話す。

・一度に話す長さが長くなりすぎないようにする。

・専門用語や略語はできるだけ避け、一般の人にも理解しやすい平易な言葉を使う。

・主語や語尾の省略、曖昧な表現を避け、何を伝えたい(聞きたい)のかが明確な文章で話す。

外国人患者さんとの直接のやりとりだけでなく、医療通訳を利用する場合でも「やさしい日本語」を利用することは非常に有用です。

医療機関でもやさしい日本語の研修をおこなうケースなども増えてきていますので、医療通訳との協働の観点でも、やさしい日本語も参考にしてみると良いでしょう。

5. 医療通訳者から医療者への確認・相談があるということを知っておく

医療通訳者は、話した人の意図が正確に相手に伝わるような通訳をおこなうために、また文化・習慣・制度の違いによる誤解や衝突を回避するために、医療者に相談・確認をすることがあります。

以下のような医療通訳者からの確認や相談があった場合は、スムーズな診療・治療のためにできる限り対応するとよいでしょう。

・患者さんや医療者に発言の意図を確認する。

例)いまおっしゃったことは「〜〜〜」ということで、間違いないでしょうか。

・患者さんの理解度を確認し、医療者に伝える。

例)今の説明を通訳しましたが、患者さんはあまり理解されていないようです。「〜〜〜」の部分を、もっと簡単な言葉で説明して頂けますか。

・文化的背景を考慮した補足説明をつけ加えて通訳をして良いかの相談をする。

例)患者さんは〇〇教の方ですので、その質問をされると驚かれるかもしれません。日本では一般的な質問であると補足説明して良いですか。

忙しい診療の中で、こうした確認によって時間がかかることにストレスを感じられてしまうこともあるかもしれません。しかし、医療安全のために、こうした確認は時に必要不可欠であることを理解した上で、医療通訳者との協働を目指すと良いでしょう。

6. 通訳者の通訳能力を知っておく

外国人医療において正しく通訳がされないことは、患者の意思決定や医療者の判断に悪影響を与え、医療安全上の大きなリスクとなり、最悪の場合、訴訟に発展する危険性もあります。

そのため、医療機関が医療通訳として認めている人(医療機関が直接雇用する医療通訳者や契約している遠隔医療通訳サービス・派遣医療通訳者など)以外の人を医療通訳として受け入れる場合には、医療通訳の訓練を受けた通訳者かどうかを事前に確認することが医療機関側の備えとして重要です。

また、診察や治療内容の説明の場面で通訳者の能力が十分でないと感じることがあれば、不安な状態で説明を続けることなく必ず外国人受入れ担当部署等に連絡をとり、通訳の交代の提案などをおこなうようにしてください。

通訳能力の不足に医療者側が気づいていたにもかかわらずそのまま治療を続行し、有害事象が起こった場合、通訳続行の判断をした医療者の責任が問われる可能性があるため、十分に注意してください。

医療通訳者と上手に連携して、より良い外国人診療を

本記事では、医療通訳者の役割から医療通訳者と協働する際のポイントについて詳しく解説しました。

日本に在住する外国人や海外からの観光客の増加に伴い、医療通訳が必要とされる場面は増えてきています。日本語に不自由な外国人の患者さんが来院したときに、医療通訳者と協働する際のポイントを理解していれば、円滑な意思疎通により安心して診療をおこなうことができるでしょう。

また、本記事で紹介した医療通訳者と協働のポイントについて、外国人診療に携わる可能性のある医療従事者に周知していくことも、医療安全のために重要です。

院内で勉強会や研修会を開くなど、周知のための取り組みを行うと院内の誰もが医療通訳者と適切な連携を取れるようになり、外国人患者受入れが安全に行える可能性が上がっていくでしょう。

メディフォンでは、医療通訳者との協働のポイントや医療通訳の活用方法について、医療機関向け説明会やセミナーの開催もおこなっております。ぜひご活用ください。


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著者情報

多言語医療ジャーナルPORT(ポルト)編集部

メディフォンは2014年1月のサービス開始以来、医療専門の遠隔通訳の事業者として業界をけん引してきました。厚生労働省、医療機関、消防などからのご利用で、現在の累計通訳実績は10万件を超えております。「多言語医療ジャーナルPORT(ポルト)」は、メディフォンがこれまでに培った知識・ノウハウをもとに、多言語医療に携わる方々のための情報を発信するメディアです。

監修者情報・友久 甲子

友久 甲子

メディフォンの遠隔医療通訳サービスや外国人患者受入れに関する研修事業の立ち上げを経験。外国人患者受入れに関する研修・セミナーの運営や講義を数多く担当し、医療機関の外国人患者受入れ体制整備コンサルティングや外国人患者受入れマニュアルの作成支援等にも数多くの実績を有する。令和元年度・令和2年度厚生労働省「外国人患者受入れ医療コーディネーター養成研修事業」研修カリキュラムテキスト作成担当・研修講師。令和4年度厚生労働省「医療費の不払い等の経歴がある訪日外国人の情報の管理等に関する仕組みの運用支援事業」有識者委員。